本研究の目的は、青年の進路決定過程において「フリーター」という選択がなされる際の心理的要因について解明することである。 予備調査として、大学生男女を対象に、フリーターという言葉への理解度、およびフリーター生活への賛同の程度に関する調査を行った。その結果、言葉とその意味についてはほぼ100%の被験者が理解していた。他方、フリーターという選択への賛同については、大多数の被験者が否定的にとらえていた。その割合は他の諸調査と比較しても高いものであり、回答に社会的望ましさが関与している可能性が考えられた。そこで、文章完成法の形式による回答法を採用し、同じ大学生男女の被験者に対し、再びフリーターという選択への態度を調査した。回答を分類し、自我同一性地位(加藤、1986の尺度による)との関連を検討したところ、アイデンティティ拡散地位の被験者が、他の地位に比して、フリーターという選択への親和的な態度を持ちやすいことが確認された。 また、フリーター選択という問題は、青年のキャリア意識形成という過程の一部である。文献研究を通じて、この過程に深くかかわるものとして、性役割における平等志向性の認知という要因が示唆されたので、男子大学生と女子大学生における性役割観とキャリア意識との関連について調査を行った。結果として、男子学生では平等志向性はキャリア意識にほとんど影響を与えていなかったが、女子学生では、鈴木淳子(1996)によって実施された有職女性への調査の結果と同じように、平等志向性とキャリア意識との間に密接な関連が確認された。
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