研究概要 |
ある微分可能多様体が与えられたとき、その上にどのようなリーマン計量を定義するか、または定義できるかは微分幾何学の最も基本的な問題である.本研究課題では、多様体をコンパクトな二次元のものに限定して、また計量を断面曲率が一定のもの、特に双曲計量に限定したものを研究対象として選んだ。今年度はこの計量全体が形作る空間、いわゆる与えられた二次元多様体のタイヒミュラー空間の境界付近での双曲計量の挙動をベイユ・ピーターソン計量を用いて詳しく解析し、その結果は現在論文としてまとめられている過程にある。 またこれと並行して,二次元多様体を一般化した空間である一次元単体的複体上に定義しうるリーマン計量とそれに付随する共形構造の空間を、極小曲面としてユーグリッド空間内に実現しうるための必要条件をChikako Meseとの共著の論文、またRobert Gulliverとの共著の論文で取扱った。 一方でリーマン計量の変形理論は、一般相対性理論で扱われるEinstein方程式の初期条件として現れる漸近的平坦な三次元多様体の構成にも応用された。代表研究者とGilbert Weinsteinとの研究は宇宙全体の電荷、ブラックホール、並びに総質量の間に成り立つPenrose予想という不等式の一つの反例を提供した. 平成18年度、19年度は、これらの研究課題を継続的に新しい問いを設定しつつ、群論に現れる剛性定理、極小曲面の構成、一般相対性理論、そして幾何学的測度論への応用を念頭に進めていきたい。
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