同形配偶子接合を行う褐藻カヤモノリを用いて、配偶子および接合子においてセントリオールが鞭毛基底小体から中心体へと機能転換する際のタンパク質の局在変化(ex.セントリン、γチューブリン)について免疫電子顕微鏡、および蛍光顕微鏡による観察を行った。蛍光顕微鏡下での免疫染色の結果では、受精後の雄性配偶子由来のセントリオールでは鞭毛基底小体から中心体への機能転換期を通して、セントリンは常に局在が観察される。一方、γ-ューブリンは、配偶子形成の最終段階で一旦消失し、受精後の雄性配偶子由来のセントリオールの周辺から微小管が放射状に発達する時期に再度、局在が認められた。しかしながら、免疫電子顕微鏡による観察は、受精し、細胞壁が肥厚していくにつれて試料の固定、作製が極めて困難になることが明らかにった。微細構造と分子の局在変化を同時におさえることが目下の課題ではあるが、これらの結果は、来年度開催される学会にて公表を予定している。 また、本年度は、細胞骨格系のタンパク質を生細胞において観察することを目的として、遺伝子導入技術の確立にむけた準備実験も行った。カヤモノリのゲノム(eleongation factor 1 alpha: EF1α)由来のプロモーター、ターミネーターおよびレポーター遺伝子としてGFPを組み込んだ発現ベクターの構築、および褐藻植物シオミドロに感染するウィルス由来のプロモーターを利用した発現ベクターを用いて、有効な遺伝子導入法(パーティクルボンバートメント法、ガラスビーズ法、エレクトロポレーション法、PEG法)について検討を行った。現在のところ、一過性でも発現している細胞を得ることができていないが、プロモーターとして用いたEF1αの発現は、ESTの結果やノーザン解析の結果から高いことが示唆されているので、細胞への導入方法についてさらなる検討が必要と思われる。
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