研究概要 |
本研究では,バイオメトリクス認証におけるテンプレート情報の漏洩という課題に対して,暗号プロトコルを応用したゼロ知識証明の技術を通用して,認証に用いる生体情報を検証者に漏らすことなく,正しく登録されている生体情報であることだけを証明する非対称なバイオメトリクス認証方式を実現することを目的としている. 平成18年度は,次の3つの研究目標に着手した. (1)バイオメトリクス認証技術の調査. 指静脈認証デバイスをインストールして,開発ツールキットの動作検証を行った.生体情報の特徴量を抽出し,その統計的性質を測定し,照合時に必要とされる読み取りによるデータの変動を明らかにした. (2)あいまい照合アルゴリズムの構築 階層型ニューラルネットワークやクラスタリングアルゴリズムなどのパターン認識方式の調査を行った.提案しようとする方式に最適な方式がどれであるかを検討した.この調査の結果を,永井慧,菊池浩明,尾形わかは,西垣正勝,ZeroBio-秘匿ニューラルネットワーク評価を用いた指紋認証システム,コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS 2006),情報処理学会,pp.633-638,2006にて発表した. (3)あいまい照合を行う暗号プロトコルの開発 生体情報の秘密を漏らさないで正しい登録情報と照合できることを示す効率のよいアルゴリズムの検討を始めた.準同型性暗号とゼロ知識証明を組み合わせて,利用者の通信コストと計算コストを最小化できるようなアルゴリズムの具体例を検討した.この検討の結果を,尾形わかは,菊池浩明,西垣正勝,リモートバイオメトリクス認証に有効な「近い」ことを示す零知識証明プロトコル,第29回情報理論とその応用シンポジウム予稿集(SITA 2006),Vol.I, pp.319-322,2006にて発表した.
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