研究概要 |
本年度は主として以下の3つの実験系を用いてBLT1,BLT2の生体内での役割の解明を目指した。 DSS誘導性腸炎モデルにおけるBLT2の保護的役割:BLT2はマウス腸管に高く発現していることから硫酸デキストラン(DSS)投与による腸炎モデルを作成したところ、BLT2欠損マウスでは野生型マウスよりも大きな体重減少と致死率を示した。腸管上皮細胞におけるCCL9,19などのケモカイン、TGF-βやIFN-γといったサイトカインの産生が上昇していることが原因として考えられた。腸管上皮細胞で転写因子Stat3のリン酸かが亢進しており、これが炎症性サイトカインの発現上昇の原因であった。以上からBLT2とそのリガンドである12-HHTは腸管上皮細胞の維持を通じて腸管に保護的な作用を有することが明らかとなった。 マクロファージ刺激におけるBLT1、BLT2の役割:マウス腹腔マクロファージと胎児線維芽細胞(MEF)をLPS、IFNγで刺激した際の炎症性サイトカイン産生におけるBLT1,BLT2欠損の影響を観察したが、遺伝子欠損マウスと野生型マウスの間に差を認めなかった。以上から、マクロファージとMEFからのサイトカイン産生には、BLT1,BLT2は影響を与えていないことがわかった。 マスト細胞におけるBLT1.BLT2の役割:マウス骨髄由来マスト細胞(BMMC)がBLT1,BLT2を発現しそれぞれLTB4、12-HHTを介した細胞遊走を引き起こすことから、マスト細胞のFcε受容体を架橋刺激した際の細胞内カルシウム上昇と炎症性サイトカイン産生を測定した。BLT1,BLT2をそれぞれ欠損するマスト細胞は正常なカルシウム上昇と炎症性サイトカイン産生を示したことから、マスト細胞に発現するBLT1,BLT2は、主としてマスト細胞の移動のみに関与していると考えられた。
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