研究課題
HTLV-1の調節遺伝子であるTaxをlck proximal promoterを用いて発達段階にある胸腺細胞にのみに発現させたトランスジェニックマウスを完成した。本マウスは白血病の発症をおこし、ヒトのATLLに特徴的である血管周囲性のひどい浸潤を多くの組織において示した。また腫瘍化した細胞はCD4-CD8-のダブルネガティブなpre-T cell由来の細胞であった。本研究では、このマウスを用いたがん細胞の多臓器への浸潤のメカニズムの解明を試みた。マウスにおけるケモカイン、及びケモカインレセプターの発現を浸潤状態と比較すると腫瘍細胞でのCXCL12/SDF-1α及びそのレセプターであるCXCR4の発現上昇は認められなかった。しかしchemotaxis assayによりマウス由来腫瘍細胞がin vitroにおいてケモカインCXCL12/SDF-1αに対し強い応答を示す事が分かった。そこで細胞内でのシグナル状態の解析を行った。すると恒常状態においてERK1/2のリン酸化が見られ、これはSDF-αによる刺激を加える事で更に増強した。このリン酸化は腫瘍細胞をMEKの阻害剤で処理することで抑えられた事から、SDF-1αの刺激によりMEK-ERK経路が働いている事が分かった。またSDF-αに対する走化性もMEKの阻害剤により抑制され、更にNF-kBの阻害剤の利用によっても走化性は抑えられた。この事からCXCL12/SDF01αへ対する腫瘍細胞の走化性にMEK-ERK経路とNF-kB経路が関与している事が考えられた。これら阻害剤は腫瘍細胞にアポトーシスを誘導も行なった。よってMEK、及びNF-kBの阻害剤がATLの治療においてよい候補となりうることが予想された。
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