研究概要 |
黒潮とその続流上の熱放出に対する大気循環の変動特性を明らかにするために、今年度は 1.対流圏全層のGPSゾンデ観測データ,船舶観測データおよび衛星観測データの解析 2.領域大気モデルを用いた海面水温強制に対する大気の応答実験 を行った。 1.に関しては、GPSゾンデ観測データおよび船舶観測データを補足的に用いて、主として衛星観測データの解析を行った。これまでの研究によって指摘されてきた黒潮続流の大気に与える影響は、高度約1.5km以下の大気境界層内にとどまるものであったのに対し、冬季における対流圏全層の気温分布を調べた本研究の解析では、黒潮続流および亜寒帯前線に伴う海面水温分布の影響が対流圏の中層にまで及んでいることを示した。この結果はそれらの前線帯の海面水温分布が大気の傾圧性を強化し、温帯低気圧の発達に影響を及ぼすことを示唆している。 2.に関しては領域大気モデルに黒潮に伴う水温変化を反映した高解像度の海面水温分布を与えた実験(Control実験)と、ガウシアンフィルターによって平滑化した海面水温分布を与えた実験(Smoothed実験)を2003年8月の1ヶ月間を対象にして行った。解析では両者の計算結果の差をとることによって、黒潮および黒潮続流が大気循環に与える影響について考察した。その結果、黒潮および黒潮続流域の空間方向の暖水偏差はその場所での上向き潜熱フラックスの増加に寄与し、そこでより多くの水蒸気が大気側に供給されていることが分かった。また、陸上における降水量の差をみると、九州、四国、紀伊半島の南岸で積算降水量が増加する傾向があり、黒潮上における大気への水蒸気供給が重要な役割を果たしていることが分かった。
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