研究課題
本研究では,量子渦を記述できるGinzburg-Landau(GL)理論に基づいて,臨界電流制御への展開を想定して,超伝導体中の微細組織と量子渦との相互作用の素過程を定量的に可視化する大規模時間依存GLシミュレーション(TDGL)技術を開発してきた。最終年度においては実験結果とシミュレーションとの詳細な比較を行いシミュレーションの妥当性を検討した。REBa2Cu3O7-x( REBCO, RE: rare earth ) 高温超伝導体を用いたコート線材がターゲット材料である。REBCO材料のJcを任意の温度Tと磁場Bで最適化することは、強磁場コイルなどの用途で特に重要である。そのためには、導入した人工ピンニングセンター ( APC:artificial pinning center) がどのように作用するかを詳しく知る必要がある。本研究で開発した大規模TDGLピン止めシミュレーションを用いることで,実験結果をほぼ再現することに成功した。シミュレーションにおいてはTEM観察で得られるAPCナノ構造に関する微細組織情報を利用した。最近の実験結果によると、試料の巨視的ピン止め力Fp = Jc×B の最大値は、APCの濃度によって0.7から 2.0 TN/m3 まで変化する。この問題に関してTDGLシミュレーションを用いて実験結果を再現してみたところ,APC 濃度が高い場合、Fpは8-10T 付近で約 1. 7 TN/m3に達し(強いピン止め領域)、その後Fp 値は飽和して同様のプラトー(集団ピン止め領域)を形成した。また、APC 濃度を半分にするとFp値は約半分になり、実験結果をほぼ正確に再現することに成功した。TDGL シミュレーションには今後,優れたJc予測能力が期待された。また、今回は酸素空孔などのランダムピン効果もシミュレーションに取り込むことで予測精度向上が実現できることが確かめられた。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Superconductor Science and Technology
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