研究課題/領域番号 |
18K00162
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
本田 代志子 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (70713527)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 安本亀八 / 生人形 / 風俗人形 / 渋沢栄一 / 博物館 / ピッツバーグ / グラスゴー |
研究実績の概要 |
本年は、作品に関する資料調査を中心に行った。ドイツでの日本美術品の流通において、広く用いられていたドイツの美術商ウムラウフのカタログの内容を精査した。ドイツ国内のハンブルク、ハイデルベルグ、フライブルクがこのカタログを参考に購入(もしくは購入検討)したことが記録されているが、当時の日本の作品カタログが確認できず、判明しない点が残った。 また、安本亀八三代目によるピッツバーグ(アメリカ合衆国)、グラスゴー(イギリス)の作品についての資料解読が進んだ。そのことにより、1910-20年代に、国際的に活躍した渋沢栄一など日本の財界人が、海外の博物館の日本コレクションの質を改善するために、安本亀八に等身大人形で日本の姿を示す人形の制作を依頼し、現地で寄贈していたことが明らかとなった。これは、それ以前の訪日外国人が日本で人形を購入し、故郷の博物館へ寄贈してきた経緯と異なるものである。 このことによって、当時の欧米の博物館の日本に関する展示は、多くが個人の寄贈品から成り、質の低いものも散在していた状況がわかった。また海外留学や商取引等で現地の人々と積極的かつ長期的交流を重ねる財界人が増え、正しい理解を促し、友好関係を深めるために、展示の人形を寄贈するに至ったことが判明した。その際に制作を依頼された安本亀八は、国際的な博覧会や銀座のデパートのショーウインドーのために人形を制作し、官民に携わってきたことから、財界人らとの繋がりも深かったと考えられる。 本年は、以上のような博物館の状況と財界人の国際的活躍との関連について明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度に計画していた人形師と作品数量についての調査は、全体の数量が多く、解読に時間を要するため、未見の資料がある。次年度も継続して調査を進めて行く予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画より大きな変更点はない。2019年度は人形師と作品数量についての研究を進め、亀八三代目の作品注文者についての資料解読を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査先の博物館等の都合により、調査を行うことができず、旅費や複写費等が使用されなかったため。次年度に実施する予定である。
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