本研究の成果として大きく二つのことが挙げられる。一つは、米国の先任権が1950年前後のドッジ・ライン期にGHQによって移入されようとし、経営側もそれを受けいれて人員整理基準に「勤続の短い者」が入ってきたという歴史的事実の発見である。ドッジ・ライン期の人員削減は、比較的短期勤続の若手が解雇対象となったことが知られていたが、その背景には先任権の影響があったことが明らかになった。もう一つは、日産の労働組合はその結成にあっては戦時下における産業報国会との連続性が見られたものの、外部環境との関係のなかで次第に会社から自立し、経営の民主化を進めていくプロセスを解明した。
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