研究課題/領域番号 |
18K12972
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研究機関 | 東北福祉大学 |
研究代表者 |
石附 敬 東北福祉大学, 総合福祉学部, 准教授 (20463200)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 利用料未払い / 未収金 / ソーシャルワーク / 特別養護老人ホーム / 経済的虐待 |
研究実績の概要 |
介護保険制度施行後19年が経過するが、特別養護老人ホームを含めた介護サービス提供事業者の抱える問題の一つに、利用料金の未払い問題がある。しかし、この問題については、その実態が十分には把握されていない。利用料未払いの問題は、以下の3点において重要である。第1に、「施設経営に関する問題」、次に経済的虐待を含む「利用者の人権擁護の問題」、最後に「利用者とその家族が抱える生活問題」である。本研究では後者の二つの問題に焦点を当てている。これらの問題の解決には、利用者本人と家族を含めた包括的なアセスメント、多様な専門職・機関との連携調整などソーシャルワークの技術を要すると考えられる。 本研究は、特別養護老人ホームにおける利用料未払い問題における施設ソーシャルワーカーである生活相談員の役割に焦点を当て、「①利用料未払いの実態とそれに対応する生活相談員の役割」「②利用料未払い問題に対応するソーシャルワークの機能とプロセス」を明らかにすることを目的とする。 研究初年度は、上記研究目的①の実態と生活相談員の関与の現状を把握することを目的に、2019年2月中旬~3月下旬にかけて、東北6県の全特別養護老人ホーム699か所を対象に、郵送法による質問紙調査を実施し、325施設から回答が得られた(回収率46%)。調査項目の概要は、①未収金の現状に関する項目(該当人数、金額、未払いの理由など)、②未収金への対応と予防の取り組み(回収に関わる業務を担当する職種、施設内の予防の取り組み、困りごとなど)等を含む。現在、得られたデータの集計と分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に予定をしていた郵送調査を完了することができた。ただし、データの集計と分析については現在取り組んでいるところである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の課題は、「未払い問題におけるソーシャルワークの機能とプロセスを明らかにする」ことである。調査の対象は、特別養護老人ホームで未払い問題を担当したことのある主任生活相談員とする。調査方法は以下の通りである。 前期調査実施時に、宮城県内の事業所にのみインタビュー調査への依頼文書及び調査票と別に返送できるよう返信用の葉書を同封し、協力者を募ったが当初想定していた事業所数が達成できなかったため、宮城県外にも拡大して20件を目標とし依頼を進めていく。具体的方法としては、本年7月を目途に、昨年度実施した調査の報告書を希望事業所に郵送を予定しているので、その際に、宮城県近郊の地域の事業所に協力依頼書類を同封する。 インタビュー調査の内容は、主に「未払い問題に対する生活相談員の施設内における役割」、「過去に対応した事例の内容」についてである。 聞き取り内容は、了解を得たうえで録音し、逐語録を作成する。作成したテキストデータを用いて、質的分析を行う。第1に、各データをもとに事例を作成し、各事例におけるソーシャルワークの機能をケース分析により明らかにする。次に、未払い問題におけるソーシャルワークのプロセスを修正版グランデッド・セオリー・アプローチにより明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の研究報告(速報)を協力者へ郵送配布する予定であったが、年度内に実施することができず、本年7月を目途に実施を目指している。また、送付の際にインタビュー調査への協力依頼書と返信用の官製はがきを同封予定である。そのため、通信費用として65,650円(202円(140円切手、62円はがき)×325か所)の他、報告書の印刷費用と送信用の封筒代等について残額を使用予定である。
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