研究課題/領域番号 |
18K12972
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研究機関 | 東北福祉大学 |
研究代表者 |
石附 敬 東北福祉大学, 総合福祉学部, 准教授 (20463200)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 特別養護老人ホーム / 未収金 / ソーシャルワーク / 経済的虐待 |
研究実績の概要 |
特別養護老人ホーム(特養)における,利用料未払いの実態と対応状況と施設ソーシャルワーカーである生活相談員の役割を明らかにすることを目的として、 2019年2月~3月、東北6県全特養(699)を対象に匿名の郵送法による質問紙調査を実施した(333施設、回収率48%)。調査項目は,未払い金(2か月以上の滞納)の現状,対応と予防の取り組み等を含んだ。2019年度はデータ分析を行い、結果の一部を2020年6月日本老年社会科学会にて発表した(新型コロナウィルスの流行により大会は中止となり、誌上発表となった)。 結果概要は以下のとおりである。全体の42%(141)で未払い金が発生しており、中央値は365千円(最高約3百万円)であった。滞納者の金銭管理形態で最多は「利用料は本人の年金や預金で賄い、金銭管理は家族」(67%)、次いで「利用料の一部を家族が負担し、本人の金銭管理は家族」(38%)であった。原因は「家族の経済困窮」(70%)、「家族による利用者の金銭の使い込み」(58%)が多かった。対応について、外部に相談できる機関がないと72%が回答し、対応する職種は生活相談員(58%)、事務職員(53%)、施設長(47%)の順であり、生活相談員の役割は、「連絡調整」「契約時の説明」「本人や家族の状況把握」「個別の状況に合わせた対応」などが抽出された。 東北地方の特養の4割が現入所者の利用料の未払い問題を抱え、原因の中心は金銭管理をしている家族の生活困窮や金銭の使い込みである。今後は、家族に対する支援の視点を含めた施設内外の支援体制の構築を進めていくこと、その際に施設ソーシャルワークを担う生活相談員の役割が重要である。 2019年度はインタビュー調査による事例収集を予定していたが、協力施設の確保が十分に進まず、2020年度に改めて協力依頼先の拡大を図り実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
特別養護老人ホームにおける、利用料未払いに対する対応について、インタビュー調査による事例収集を2019年度に予定していたが、協力先の確保を十分に進めることができなかった。今年度は、依頼範囲を拡大してインタビュー協力者を確保することを目指す。
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今後の研究の推進方策 |
量的調査で得られたデータの分析及び論文作成を進める。また、質的調査としてインタビューによる事例収集と分析を行っていく。当初は宮城県内に限定した依頼を勧めていたが、南東北3県を中心に依頼先を拡大し、20カ所のインタビューを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度にインタビュー協力先を20件確保する予定であったが、協力可能な施設が十分に確保できず、助成金を使用することができなかった。改めて対象を南東北3県を中心に拡大し、20件確保の上、インタビュー調査を実施予定。
次年度使用額については、インタビューに要する旅費、謝礼金、データ処理人件費、報告書印刷費用及び通信費に使用予定。
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