本研究は、東北地方の特別養護老人ホームにおける、利用料未払いの実態とそれに対応する施設内の取組み状況の把握と、この問題をソーシャルワークの視点から分析・検討することを通して、各施設の問題解決に資する情報の提供と、必要な政策提言を目指している。 最終年度は、2022年12月から翌年1月にかけて、東北地方 6 県の全特別養護老人ホーム 730 カ所を対象に郵送法のアンケート調査を実施し(東北福祉大学研究倫理審RS221102)、303 カ所(41.5%)より回答が得られた。現入所者の未収金があると回答した施設は 33%(n=101)で、過去に未収金の発生の経験があると回答したのは 29%(n=89)であった。また、全体の約半数、49%(n=148)、が現在及び、又は過去に未収金の対応を経験していた。 現入所者の未収金がある施設(n=100 未回答 1)のうち、未収金の総額は最小が 2 万 5 千円、最大は903 万円に達していた。該当施設全体の中央値は 35 万 3 千円であった。2019年に実施した前回調査と比べると、中央値に大きな差は見られないが、一部の施設で未収金の総額が高額になっていた(100万円以上 2019年 14%→2022年度 20%)。 施設において、未収金の問題に対応する人は、生活相談員が 6 割強と最も多く、次いで事務職員が 5 割弱であった。また、約半数の施設が未収金の発生予防に向けた取り組みを行っていた。その他、アンケートの自由記載の分析と、アンケート調査後に協力が得られた6施設に対する個別インタビューの分析を通じて、未収金発生の兆候や、施設における未収金発生予防における取組の具体例の整理、さらに未収金発生から解決に向けた施設ソーシャルワークの展開について検討を進めている。
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