研究分担者 |
西村 尚之 名古屋産業大学, 環境情報学部, 教授 (10387904)
真鍋 徹 北九州市立自然史, 歴史博物館・自然史課, 学芸員 (90359472)
田内 裕之 森林総合研究所, 森林植生研究領域, 領域長 (20353766)
島谷 健一郎 統計数理研究所, モデリング研究系, 助教 (70332129)
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研究概要 |
西日本の潜在自然植生である常緑広葉樹林(照葉樹林)は古くから人為の影響を受け,残存する自然度の高い森林はわずかである。自然植生の回復のためには,更新のパターンの解明が必須である。これまで,森林の更新パターンは成木を中心にモニターされてきたが,環境ストレスに敏感な幼樹の定着成否が森林更新を決定すると考えた。稚幼樹にとって影響力の大きな環境変動は,倒木によるギャップ形成による光環境の急激な変動である。耐陰性の高い照葉樹の稚幼樹が強光環境下に存在可能か否かを明らかにすることが照葉樹林の更新パターンの解明につながる。そこで,強光環境への応答を明らかにするために,照葉樹林の優占種(イスノキ,シイ,カシ類7種)の栽培実験を行った。3段階の被陰環境(相対照度7,14,50%)においたところ,いずれの種も明るい環境で多く展葉し,また,最大光合成速度も高かった。冬季(低温期)になると,最大光合成速度は低下した。1月に被陰なしの環境に暴露したところ,光化学系IIにおける最大量子収率(Fv/Fm)の著しい低下が見られた。これは,葉緑体の光合成反応中心が,強光によって阻害を強く受けていることを示す。そして,そのまま葉を落としてしまう種もあった(クスノキや相対照度7%由来のイスノキなど)。Fv/Fmは,その後,3月まで低下したままで回復は見られなかった。低温期に急激に強光環境に変動することは,常緑樹にとって,好ましくないことが推察された。
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