研究概要 |
糖尿病性腎症の回復に積極的な役割を果たす遺伝子を探索するために、2つのモデルマウスすなわちA-ZIP/F-1脂肪萎縮性糖尿病マウスのレプチン治療、あるいはストレプトゾトシン誘発1型糖尿病マウスのインスリン治療において腎糸球体からmRNAを抽出し、遺伝子発現のプロファイルを網羅的に解析した。糖尿病の糸球体で発現亢進し、早期に回復する分子としては、gremlin 1 (繊維化した組織で発現するBMP antagonist)やgrowth arrest-specific 6(糸球体腫大を起こす増殖因子)、Wt-1(腎臓発生に重要でadult kidneyではpodocyteに特異的に発現する転写因子)及びRab3b(分泌顆粒のエキソサイトーシスを調節するras-oncogene family分子)などが含まれていた。また、マウス糖尿病性腎症の糸球体・メサンギウム細胞において1回膜貫通型の免疫系シグナル受容体HE-Rの発現が亢進すること、HE-R変異マウスでは糖尿病惹起後の蛋白尿が有意に減少することを見出した。さらに尿中Nga1が糖尿病性腎症の進展に伴って、近位尿細管での再吸収不全によって増加し、アンギオテンシン受容体拮抗薬により減少することを示し、尿中Ngalのバイオマーカーとしての有用性を明らかにした(Kuwabara, Sugawara et al. Kidney Int 2009, Kasahara, Sugawara et al. Nephrol Dial Transplant 2009)。また糖尿病性腎症の増悪因子としてpodocyteに発現するconnective tissue growth factorの重要性を解明し、治療標的の候補となることを明らかにした(Yokoi, Sugawara et al. Kidney Int 2008)。
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