研究概要 |
本研究では,テキストメッセージによるコミュニケーション場面と対面場面において,感情表現を含む複数の気持ちを伝える表現がどのように理解されるのか,また,相手の存在感の認知の特徴について,社会的スキルの側面から明らかとすることを目的とした。第一に,社会的スキルおよび会話能力の違いが,受け手として相手のテキストメッセージの理解にどのような影響を及ぼすか検証した結果,謝罪の気持ちを伝える表現よりも,その他の3種類の伝達表現の方が相手のメッセージを理解している傾向が示された。一方,会話能力要因は有意ではなかったが,社会的スキル要因において上位群の方が下位群よりも理解している傾向が示された。続いて,対面場面において同様の検証を行ったところ,テキストメッセージでのやり取りとほぼ同様の傾向が示された。このことより,相手のメッセージの伝達表現を理解するという側面においては,メディアという要因に影響されないことが示唆された。 第二に,送り手として相手に自分の書いたテキストメッセージや対面での話(メッセージ)がどの程度理解されているかについて分析した。その結果,テキストメッセージにおいてはいずれも有意ではなかったのに対し,対面では,社会的スキルの高い方が相手にきちんと伝わっていると思っていることが示された。 第三に,相手のメッセージを受け取った時,および相手にメッセージを書いている時の2場面の相手の存在感について分析した。その結果,いずれの場合においても,喜怒哀楽を伝える表現や感謝の気持ちを伝える表現は,相手の存在感を強く認知するのに対し,謝罪の気持ちを伝える表現は,相手の存在感を認知する傾向が弱いことが明らかとなった。
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