昨年度の分析結果をふまえ、下記の視点から「モニュメント空間」の形成・変容・死滅過程の研究を行い、その場を媒介として成立する地域の歴史認識や、王権の地域認識が多元的に重層し、相克する状況をある程度明らかにすることが可能となった。 具体的には、(1)史蹟と伝承をとりまく「場」の特異性に着目しながら、風土記や万葉集に登場する史蹟がモニュメントとして地域住民に認識され、地名説話として定着し、場合によっては中央により改変される過程を検討した。(2)在地の語りと王権の語りが錯綜する多元的状況を想定し、その歴史的展開について考察した。伝承が記録化ないしは口承化される過程を、在地勢力と王権の相互関係から読み解くことにより、モニュメント空間の変容過程を検討した。近世地誌類も分析対象とすることで、モニュメント空間が変容し、場合によっては消滅することも判明した。(3)従来の記紀分析を中心にして得られた歴史認識や<王権の語り>との差異に留意することで、西摂・播磨地域のモニュメント空間の独自性をある程度浮き彫りにすることが出来た。 ただし、平成21年7月から別科研の経費にて「特命講師」として雇用されることとなり、職務専念規定のため、同年6月末日にて研究を終了せざるをえず、研究が中断されるtことなり、当初の予定通り研究を進めることが出来なかった。なお、同月末までの成果報告は、報告書を作成することで成果の公開に代えている。
|