我々は、マイコプラズマのリポタンパク質に由来する活性リポペプチドであるFSL-1を用いて、自然免疫において重要な役割を果たすファゴサイトーシスの分子メカニズムについて調べている。FSL-1はToll-like receptor(TLR)2を介してマクロファージを活性化できることが知られていたが、さらにFSL-1自体もマクロファージによって取り込まれることがわかった。そして、その取り込みはクラスリン依存的であることが明らかにされた。このことはこれまで報告のあるTLR2リガンドであるLTAの取り込みと異なるメカニズムで起きることがわかった。さらに、この取り込みはTLR2非存在下でも起きた。したがって、FSL-1の認識にはTLR2が重要であるが、その取り込みにはTLR2が必要ではないことがわかった。これらの詳細なデータは現在論文にまとめているところであり、国際的な学術雑誌への投稿の準備中である。 また、ファゴサイトーシスなどにおける膜輸送で重要な役割を果たすRab proteinの発現に及ぼすFSL-1の影響を調べた。マクロファージにおいて、1時間前後のFSL-1刺激によりRab5、特にRab5aのメッセンジャーRNAの発現が一過性に低下することがリアルタイムPCR法により確認された。現在、Rab5の発現減少が実際にマクロファージによる貪食を減少させることがあるか確認中である。これまで、TLRの刺激がRabproteinの発現に影響を与えるという報告はなく、今後、他のTLRリガンドでも同様なことが起きるのか、そしてRab5発現の減少が具体的に自然免疫系においてどのような影響を及ぼしているか詳細に研究する予定である。
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