研究課題
本研究の主な目的は、貧困が生じる要因とそれらに関する政策的対応についての考察を踏まえながら、地域間の様々な格差を縮小させる政策が、我が国で拡大傾向にある貧困に対してどの稗度の効果を発揮しうるかについて、社会保障制度の効果と比較検討しながら分析を行うことにある。平成19年度は、分析の第一段階として、日本の各地域の貧困がどのような状況にあるか、また貧困と人々の生活行動はどのように関連しているかについて分析を行い、それらを学術論文としてまとめた。分析からは、地域内の格差・貧困と当該地域の住民の生活満足度に一定の相関があることが示されており、格差の拡大がその地域の住環境にマイナスの影響を与えている可能性が示唆された。また、貧困削減策の一つとしてベーシック・インカム政策を取り上げ、政策の導入が、格差・貧困の縮小にどのような影響をもたらすかについて最適課税の理論モデルを基礎として簡単なシミュレーションを行った。平成20年度は、「平成19年賃金構造基本統計調査」のデータに基づき、地域間の賃金格差に対して地域の産業構造がどのような影響を与えているかについて、ジニ係数の要因分解の手法を用いながら検討を行った。また、地域間における純粋な賃金格差を縮小させる政策や、地域内における企業規模間賃金格差を縮小させる政策が実施された場合に、それらの政策が全体の格差、貧困に対してどの程度の影響をもたらすかについて、シミュレーション分析を行った。推定結果からは、我が國においては、主に「製造業」に従事する労働者の賃金格差を縮小する政策が、貧困の削減に比較的大きな役割を果たす点が示唆された。また、「医療・福祉業」といった産業部門で働く労働者の賃金引上げも、貧困削減に対して一定の効果を持つ点を示した。最後の研究成果については、現在、発表論文として学術誌に投稿中である。
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季刊社会保障研究 44巻4号
ページ: 447-459
季刊社会保障研究 44巻3号
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国民経済雑誌 198巻2号
ページ: 40-54
Japan Labor Review Vol. 5, No. 4
ページ: 21-47