研究課題
2020年度は、研究計画に基づき速度追従の関係をもちやすい車両タイプの組合せを定量的に評価した。特に、インドで観測された実交通において頻出する組合せを評価することで、これまで定性的に記述されてきた特定車両タイプの群れの存在を明らかにするものである。結果、交通の構成車両をバイク、自動三輪車、乗用車、大型車と4タイプに分類した際に、おおよその車両が自車と同じタイプの車両と速度追従の関係をもちやすいことが統計的に示された。特にバイクは他のタイプの車両との関係をもちにくく、同じタイプのみで集まる傾向が見られた。ここから、特にタイプ毎に車線を分けない場合にも、バイクのみが集まった領域および、その他のタイプの車両が集まった領域に交通が分離することが示唆された。なお、本解析を通じて、比較的挙動が機敏で車両サイズも小さいバイクと自動三輪車が互いに速度追従の関係をもちにくいことが明らかになった。この現象は、車両がタイプによって交通の中で分離する現象を、似た特性をもった粒子が集まる「偏析現象」で説明する多くの研究に対して、問題提起を行う結果である。一方、Graph-Based Induction法を用いた部分グラフ同型判定により、速度追従関係をもつ車両のネットワークから、頻出するサブネットワークを抽出するプログラムを作成した。現在、当プログラムを用いて計算を行っているが、上述の組合せを基礎とした検討で示唆された特定車両タイプによる群れの存在を、本計算による事前検討も示唆している。さらに、車両タイプ毎に取りやすいサブネットワーク形状があることも示唆されている。
2: おおむね順調に進展している
計画通りに追従関係をもちやすい車両タイプのペアに関する解析を終えるとともに、2021年度に用いるアルゴリズム開発を終了することができた。
当初の計画通り、頻出サブネットワークの検出を行う。一方で、事前検討で必要性が明らかになった、二次元混合交通の安定性指標に関する検討を進めることで、安定性の高い車列の探索を目指す。さらに、2020年度に明らかになった車両タイプの追従関係の偏りから、交通シミュレーションで発生させる車両タイプの選択モデルの提案にも着手したい。
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、旅費の使用がなかったため次年度使用額が生じた。2021年度は状況によっては旅費を使用するとともに、2020年度の研究から明らかになった必要な検討項目に対して、主に計算機の能力拡充により対応する予定である。
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Physica A: Statistical Mechanics and its Applications
巻: 570 ページ: 125789~125789
10.1016/j.physa.2021.125789