研究概要 |
本研究では、昨年度までに(1)カルシニューリン系遺伝子群とその下流の情報伝達系に関連する遺伝子群のSNP解析及び(2)統合失調症120家系(360人)を対象としたAffymetrix 100K SNPChipを用いたゲノムワイドな関連研究(GWA:genome-wide association study)で得られた遺伝子群についてtagSNPsによる2000人規模のAssociation Study(高密度SNPsジェノタイピング)を行い、それぞれの結果から複数のGABA受容体関連遺伝子に有意な結果を得た。したがって、カルシニューリンからGABA受容体へと続くシグナルカスケードが統合失調症の発症・病態に強く関与している可能性が考えられた。 そこで、本年度は昨年までの結果に基づき、(3)GABA受容体関連遺伝子群を含むカルシニューリン関連遺伝子に存在する約400個のSNPsについて日本人統合失調症患者1,300人および健常対照者1,500人の計2,800人を用いたgene-centric association studyをillumina社BeadXpressを用いて行い、実験から遺伝統計解析まで終了した。その結果、新規に同定されたものを含めた複数のGABA受容体関連遺伝子が統合失調症の病態に関与している可能性が高いことを確認した。さらにそれらの有望なGABA関連遺伝子群について、統合失調症患者死後脳35症例および年齢・性別をマッチさせた健常対照群死後脳35症例を用いたTaqMan法によるmRNA発現変化の測定を行い、いくつかの神経発達に関与する遺伝子について統合失調症罹患者の脳内で変化がみられることを見出した。
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