本研究は、人間ドック受診者のデータにおいて微量アルブミン尿を測定し、メタボリックシンドロームMSと慢性腎臓病CKDとの関連を疫学的に解析した。 1)2009~2010年度において人間ドック健診機関において本研究に協力いただいたメタボリックシンドロームMSを認める健診者298名と非メタボリックシンドローム健診者766名、計1064名(無作為抽出、男性569名、女性495名)(25歳-79歳)の臨床データを比較解析した。2)MS群でのCKD(+)は170/298(57.0%)、非MS群でのCKD(+)は380/766(49.6%)で統計学的に有意にMS群に多かった。また脳卒中既往では有意差はなかったが、虚血性心疾患既往で有意差を認め、MS群に多かった。3)MS群は非MS群に比べ、体格指数BMI、腹囲、収縮期血圧、拡張期血圧、血清LDL-C値、中性脂肪値、GOT値、GPT値、γ-GTP値、尿酸値、血糖値、HbAlc値、クレアチニン値、微量アルブミン尿値(尿中クレアチニン値補正)は有意に高値であった。また超音波検査による脂肪肝もMS群に有意に多かった。4)一方、MS群は非MS群に比べ、推算GFR値、血清HDL-C値は有意に低かった。5)MS群は非MS群に比べ、微量アルブミン単独陽性者、尿蛋白単独陽性者、あるいはそのどちらか陽性者が有意に多かった。また尿蛋白定性の程度でもMS群が高度であった。6)高血圧や糖尿病の既往のない健診者のみで検討しても、MS群は非MS群に比べ、CKD、微量アルブミン単独陽性者、尿蛋白単独陽性者が有意に多かった。 以上の結果から、メタボリックシンドロームでは慢性腎臓病患者が有意に多く、微量アルブミン尿陽性者や尿蛋白単独陽性者も有意に多かったことから、メタボリックシンドローム固有の腎症の存在が示唆された。
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