本研究は、19世紀末、一連の交流があった英米の文化人たち、特に大西洋の両岸で活躍した人物たちの残した文化的・文学的仕事に着目し、ひとつの「文化圏」が構築されていた模様を明らかにすることを目的とする。中でもイタリアに在住した米小説家、F.Marion Crawfordを中心に研究を進め、文芸思想から大衆文化にまで至る幅広い影響力を観察した。同時に彼の父である彫刻家Thomas Crawfordの経歴や作品を追跡することで、実は世紀末に国際小説家を中心に構築されたと考えていた「アメリカ文化圏」が、既に19世紀中葉、幅広い分野の人材を含む母胎を形成しはじめた様子が実証できた。
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