研究課題
Phillips製の3Tスキャナーを用いて統合失調症16名(通年で36名)、気分障害12名(通年で20名)、てんかん8名(通年で23名)、正常被験者51名(通年で75名)の撮像を行った。撮像方法は通常の臨床診断に用いられるスピンエコー法であり頭部全体をふくむT1強調画像を190スライスの画像で撮像した。撮像されたMRI画像はDell製の計算機にDICOM形式で保存した。DICOM画像はMATLABプログラムを用いてプログラム上で計算可能なINT16形式のインテンシティのみの行列に変換され計算機上に格納されている。その上で組織分離のプログラムを作成した。プログラムはMRIから得られた画像を解剖学的な組織に分離することを目的としている。画素の濃度と画素の周辺の画素との関係を元に、当該画素が灰白質、白質、脳脊髄液のどの組織に属するかを決定する変換関数を作成することで実現される。ラプラシアン(微分作用素)と隣接ボクセルから推定される確率関数を用いたアルゴリズムをもとにして灰白質、白質、脳脊髄液の分離画像の作成を行った。以上の計算過程をへて灰白質の総体積の測定が可能になり、また灰白質の形状か疾患特性を探ることが可能になった。この分離の過程を現在のところ、精神疾患のMRI画像に適応し、分離を行っている段階に達した。分離された画像を用いて統計学的な処理を出来る状況にある環境である。しかしながら現在のアルゴリズムでは精神科疾患群の特徴(統計学的検定での有意差)を抽出するのは今のところ困難である。肉眼的解剖学的な所見と比較すると他部位と思われる部分が残るために起こる問題が大きいと考えられた。得られたアルゴリズムに新たな理論体系を結びつけることによって将来的に精度を高めていき疾患の特徴を捉えることが実現可能となれば数学理論と臨床研究の橋渡しになると考えられる。今回の研究では臨床医学と理学理論が結びついてイノベーションを目指す環境の初期的準備が整えられたと期待される。
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Bipolar Disord
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