研究課題/領域番号 |
20K05873
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
小倉 次郎 山形大学, 医学部, 准教授 (20580640)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 認知症 / フラボノイド / PDI / タンパク質修飾 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
認知症の克服は21世紀における最も重大な課題である。Protein disulfide isomerase (PDI) はタンパク質中のシステインとシステインを繋ぐ働きがあり、タンパク質の立体構造を作る役割を担っている。神経変性の特徴は異常タンパク質の蓄積であるが、神経変性疾患患者の脳ではPDIがS-ニトロシル (SNO) 化され、これが異常タンパク質の蓄積、ひいては神経変性の原因とされている。そこで、本研究では認知症予防の実現を最終目標とし、PDIの脱修飾により認知機能の低下抑制作用を発揮する食品成分を同定し、臨床応用に向けた学術基盤を構築する。今年度はSH-SY5Y細胞を用いて、認知症の原因となる高グルコース条件における神経変性の進行とSNO化PDIの関連について検証した。ヒト神経芽細胞腫由来SH-SY5Y細胞を4.5 g/Lの高グルコース培地で28日間培養した糖負荷モデルを作製した。通常培地で培養した細胞と比較し、糖負荷開始直後から酸化ストレスが誘導され、7日目からはPDIのSNO化が進行した。28日目には抗酸化酵素の誘導により酸化ストレスが抑制されたが、PDIのSNO化は維持された。即ち、糖負荷により安定的なSNO化が生じることが示唆された。また、フラボノイド配糖体であるネオヘスペリジンはグルコース負荷により生じたSNO化PDI対する脱修飾作用を示した。 神経細胞内で生じる安定的なPDIのSNO化は343番目のシステイン (C343) に生じる。そこで、野生型PDIおよびC343S変異型PDIを遺伝子導入したSH-SY5Y細胞を作製し、同様の条件で糖負荷を行った。その結果、PDI wt細胞ではPDIのSNO化が確認されたが、PDI C343S細胞ではSNO化が誘導されなかった。即ち、糖負荷によるPDIのSNO化はC343に生じることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は当初、組換えPDIタンパク質を用いて、SNO化PDIに対するフラボノイドの脱修飾作用について網羅的に検証する予定であった。しかしながら、2020年度中に異動となり、予定を変更して2021年度に予定していた細胞株を用いた検討を行った。フラボノイドの作用の網羅的な検証については、組換えタンパク質の合成、精製方法の構築、LC/MSによるSNO化PDIの条件の検証、スクリーニング用のフラボノイドライブラリーの準備を行った。しかしながら、LC/MSによるSNO化PDIの同定については現所属先のLC/MSでは解析ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に行えなかったフラボノイドの作用の網羅的な検証を行う。現在の課題として、SNO化PDIがLC/MSで検出できないことが挙げられる。この点については、研究協力者の施設で測定・解析することで解決を図る。LC/MSでの測定条件が確立でき次第、フラボノイドライブラリーを用いたスクリーニングを行う。また、既にSNO化PDIの脱修飾作用を有するフラボノイドとしてネオヘスペリジンを同定したことから、2022年度のin vivo実験に向けた準備を開始する。
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