研究概要 |
わが国を含むモンスーンアジア農村に共通する人間-環境系の成立および変容過程に焦点を当て,わが国の里山ランドスケープ,およびモンスーンアジア農村の類似ランドスケープにみられる土地利用構成や生態資源利用・管理の相違を明らかにし,モンスーンアジア農村の社会的価値に応じた生態系供給サービスを抽出することを目的に,本年度はわが国の里山ランドスケープが本来維持していた生態系サービスについて重点的な整理を行った。成果の一部は,国連ミレニアム生態系サブグローバル評価の報告書としてとりまとめ,名古屋で開催された生物多様性条約締約国第10園会議においても報告された。また,わが国の里山ランドスケープと重点比較対象としたインドネシア西ジャワでは,同一の地形立地上に展開し,土地利用構成が異なる小集水域を複数設置し,景観構造の違いが生態系サービスの発現にもたらす影響,および住民の生態系サービスに対する認識の違いを調査した。景観構造の違いに関しては,単時期の高解像度衛星画像から高精度で土地被覆分類を行う手法を開発し,成果として得られた土地被覆分類図をもとに小集水域間の景観構造を類型化した。生態系サービスの発現に関しては,とくに天然林の面積と居住域からの距離に依存するが,タケ類などの二次林(里山林)の存在も重要な役割を果たしていることがわかった。特定の生業にタケが原材料として使用されることが多く,その場合,タケ林が天然林に接して維持されており,直接の生態系供給サービスとしての価値だけではなく,森林性動物の生物多様性維持にも大きく貢献していることがわかった。
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