研究課題
近年、好塩基球の新しい機能が続々と発見され、生体防御におけるその役割の重要性が注目されている。本研究では、好塩基球特異的な機能を解析するための新しいツールとして、標的細胞ノックアウト法(TRECK法)をCre-loxPシステムに応用し、好塩基球(FcεRIα^+CD49b^+)の恒常的欠損マウスおよび誘導型欠損マウスを開発することを目的とした。すなわち、CD49bプロモーターでNCreの発現を制御するTgマウス[CD49bプロモーター-NCre]((1))とloxP配列の下流に配したジフテリア毒素Aフラグメント(DTA)あるいはジフテリア毒素受容体(DTR)の発現をFcεRIα^プロモーターで制御するTgマウス[FcεRIα^プロモーター-loxP-neo-loxP-DTA]((2))および[FcεRIα^プロモーター・loxP-neo-loxP-DTR]((3))を作製し、(1)と(2)あるいは(1)と(3)を交配することによりダブルTgマウスを作製することを基本原理とした。C57BL/6Nを背景としそ3種のTgマウスを樹立((1)6系統、(2)3系統、(3)6系統)した。Tgマウス(1)は、6系統全てで脾臓由来CD49b^+細胞においてNCre mRNAが発現しており、特に発現の強かった系統を用いてダブルTgマウスの作製を行うこととした。Tgマウス(2)は3系統全てで子孫が得られず、繁殖できなかった。Tgマウス(3)と初期胚でCreを発現するEIIa-Creマウスを交配してダブルTgマウスを作出し、脾臓細胞を材料としたRT-PCRを行った結果、予想通りFcεRIα^+細胞でDTR mRNAが発現していることが確認できた。このダブルTgマウスにジフテリア毒素(DT)を腹腔内投与すると、末梢血好塩基球は50%以下に減少した。さらに、Tgマウス(1)とTgマウス(3)を交配して作出したダブルTgマウスにDTを投与したところ、期待通り末梢血好塩基球が約40%に減少していた。本研究で樹立したDTR発現型ダブルTgマウスは、DTの投与により誘導的に好塩基球を傷害することができ、好塩基球の生体内における機能の解析に有用である。また、TRECK法とCre-loxPシステムを組み合わせることで、マウス生体内の様々な細胞を標的とすることが可能であることが示された。
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Transgenic Res
巻: 21 ページ: 51-62
DOI:10.1007/s11248-011-9504-z