研究課題
注意欠陥多動性障害(Attention Deficit/Hyperactivity Disorder:以下、AD/HD)とは、発達段階に不相応な注意力障害、衝動性、多動性を特徴とする行動障害である。この行動障害の発症に関しては、遺伝的要因の強い関与が知られているが、その発症機序に関しては仮説が提案されているものの明らかになっていない。また、本障害の遺伝的要因は多因子疾患である事が知られており、多様な遺伝的モデル動物が必要であると考えられる。ENU誘発突然変異によってAD/HD類似の行動異常を示すモデルマウスのスクリーニングを行うとともに、表現型異常の責任遺伝子の同定を行った。その結果、有力なAD/HDモデル候補の一つである、M-174変異体においてNMDA受容体のサブユニットの一つ、Grinl遺伝子上にミスセンス変異が発見された。この、M-174変異体に関してopen-field test、home-cage activity test、resident-intruder test、rotarod test、social-interaction test、object-exploration testなどの行動試験やAD/HDの治療薬である、メチルフェニデートを用いた行動薬理学的解析などを行なった。さらに、in vivoマイクロダイアリシスを用いた線条体ドーパミン量の測定、脳組織におけるcFosの発現解析、ERKなどのシグナルカスケード系の生化学的解析を行った。その結果、居住環境における恒常的な高活動、注意の障害を示唆する行動異常、運動協調性の軽度の障害が観察された。また、AD/HD治療薬の一つであるメチルフェニデートの効果を検討した結果、野生型と比較して薬剤への応答に様々な相違が確認された。これらの事から、M-174変異体はAD/HDモデルとして高い有用性を持つものと考えられる。
すべて 2009
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Experimental Animal 58
ページ: 443-450