研究概要 |
Al障害を受けているエンドウ根の回復機構について解析を進め、これまでの結果からAl前処理(40μ,12時間)により酸化ストレスが誘導され、さらにAl処理を12時間継続すると(継続処理根)酸化ストレスは更に進行した。一方、前処理12時間後にAlを除去した回復処理(回復処理根)では、中心柱近傍の根の再伸長をともなった酸化ストレスの減少が認められた。ただし細胞死に関連する脂質過酸化は両処理根で増加したが顕著な差異は認めなかった。Al処理により表皮、表層における組織の崩壊に伴いリグニンの関与を認めたのでその生成過程の初発に関与するフェニルアラニンアンモニアリアーゼの活性測定した結果、回復根では継続処理根に比べ活性低下を認めた。一方、回復処理根は継続処理根に比べ根内及びNADPH依存で分泌されるスーパーオキシドアニオンの量が減少したので、Alにより増加するスーパーオキシドアニオンの生成機構についてNADPHオキシダーゼの活性変動を調べたが確認出来なかった。 本年度は最終年度であり、Al障害・回復過程において根端の構造変化と酸化ストレスを有機的に結び付けるモデルの構築を試みた。Al継続処理及び回復処理根において酸化ストレスに起因するスーパーオキシドアニオン、過酸化水素、リグニン等がそれぞれ増加あるいは減少する事実の他、細胞死の標識色素エバンスブルー[EB]で強く染色され根をらせん状に取り巻く帯条の部位が認められ、これらは両処理根でその消長変化を認めなかった。一方、連続処理根では帯状の部位間の根組織の崩壊が中心柱近くまで進行したが回復処理根では帯状の部位間の中心柱近傍が明らかに再伸長していた。帯状の部位は死細胞を含みこの部位がバリアーとなり毒性 Alの内部への侵入を防ぎ中心柱近傍の細胞の伸長能を保持させていると考えプログラム細胞死様の役割を果たしている可能性を提唱した。
|