研究課題/領域番号 |
23520100
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中村 靖子 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (70262483)
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研究分担者 |
大平 英樹 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (90221837)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | Affekt-theorie / 情動理論 / ドイツ語文学 / 初期フロイト / 戦後スイス文学 / 19世紀言語思想 |
研究概要 |
代表者中村は、十九世紀初頭からフロイトに至るまでの文献の中で、フロイトの欲動理論の前段階を準備したものを時代順に追い、かつ、それらがそれぞれの時代における文学作品の中に相関を持つという観点から、「汝、偶像をつくるなかれ――フリッシュの掌編「ストーリー」に関する情動の生態学的考察――」(総43頁)としてまとめ、発表した。これらの過程において、ゲーテによるニュートンの光学批判が、その後ニュートン力学の絶対性が揺らぐにつれて、心理的・生理的色彩論という側面において再評価されていることに鑑み、フロイトの「心理学層亜」における、(測定可能な)量から(測定不可能である)質への転換装置としての「こころ」という捉え方を再考する手がかりをえた。これらを踏まえて、フロイト博物館付属アルヒーフでは、フロイトの蔵書にあるゲーテの自然科学的論集や、連合心理学の祖とされるジョン・ロックの「人間知性理論」などにおけるフロイトによる書き込みについて調べた。分担者大平は、Northeastern大学にて同大学のLisa Feldman-Barrett教授のラボのセミナーに参加し、同教授の企画として講演Functional association of brain and body in affective decision makingを行った。さらには、同教授及びそのグループの研究者とセミナーを開催し、互いの研究知見について知識を共有した上で、将来の共同研究の可能性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フロイト博物館付属アルヒーフにおける調査では、「心理学草案」の元となったフロイトの直筆の手紙を調べ、そこにある図式などを確認した。フロイトの直筆による図と、編者らによってきれいにトリミングされ出版された図とでは、いくらかニュアンスの違いがある可能性について考える手がかりをえた。
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今後の研究の推進方策 |
以上のことから、今後、さらにフロイトの直筆の手紙を調査し、フロイト理論の再考の手がかりとする。また、ゲーテの自然科学論集には、骨学論、形態論などがあるが、これらのデータに基づいたゲーテの考察と、神経学者フロイトの思想的基盤との共通性について、さらに検討していく。また、分担者による能画像に基づいた脳機能研究のその都度の成果を踏まえつつ、フロイトの理論を照射する。
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次年度の研究費の使用計画 |
基本的には、フロイト博物館付属アルヒーフを訪れ、さらにフロイトの直筆草案を検証する。そのための渡航費と、滞在費(イギリス/ロンドン)が主たる支出となる。また、分担者とは綿密な連絡を取り、感情基盤としての脳機能についての知見を更新しつつ、分担者が海外でこれらの知見を発表するための渡航費に充てる。
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