研究課題/領域番号 |
23790977
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山下 雄也 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (20431843)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | TDP-43 / 筋萎縮性側索硬化症 / RNA編集 / ADAR2 / AMPA受容体 / GluA2 / 神経細胞死 |
研究概要 |
RNA編集酵素ADAR2の活性低下によるAMPA受容体サブユニットGluA2 Q/R部位のRNA編集低下、およびTDP-43陽性の細胞質封入体形成は孤発性ALS運動ニューロンに見られる疾患特異的分子変化である。両者の分子異常は、同一の運動ニューロンで生じていることが明らかにされ、分子連関が存在することが示唆される。TDP-43の分子変化がRNA編集異常の上流の変化であるか下流の変化であるのかを突き止め、TDP-43の変化により生じる神経細胞死カスケードを解明し、治療への道筋を確立する。TDP-43の変化がADAR2活性低下、RNA編集異常の上流の可能性について調べた。2系統の培養細胞を用い、野生型TDP-43、TDP-43 siRNA、あるいは様々なTDP-43変異体を導入し、GluA2 Q/R部位のRNA編集率、ADAR2 mRNAの発現量、GluA2 pre-mRNAの発現量、酵素対基質量比の変化を検討した。その結果、ADAR2活性に有意な変化はみられなかった。次にTDP-43の変化がADAR2活性低下、RNA編集異常の下流の可能性について調べた。ADAR2コンディショナルノックアウトマウスを用い、ADAR2の発現が低下した運動ニューロンにおいてTDP-43の局在異常が観察された。これらのことからTDP-43の変化はADAR2活性低下、RNA編集異常の下流であることが明らかとなった。今年度はこの系を用いADAR2活性低下によるTDP-43の変化を起こし神経細胞死に至る経路について詳細に検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TDP-43の変化がADAR2活性低下、RNA編集異常の上流、下流の可能性の検討を行い、TDP-43の変化がADAR2 活性低下の下流にあることを明らかにした。また前半部のTDP-43の変化がADAR2 活性低下、RNA編集異常の上流にはないことを論文にまとめ、計画通りに研究が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
TDP-43がRNA編集の変化の下流にあることが分かったので、引き続き昨年度の結果を踏まえて、高齢のAR2マウス(12ヶ月齢以上)の変化とともに若年齢のどの時期からその変化が見られるか検討を行い運動ニューロンが神経細胞死に至るカスケードの検討を行う。得られた孤発性筋萎縮性側索硬化症におけるTDP-43に関する神経細胞死カスケードの解析について、得られた結果を取りまとめ、成果発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き平成23年度の結果を踏まえて、高齢のAR2マウス(12ヶ月齢以上)の変化を確認しもし変化が出ていなければ更に高齢の AR2マウスで検討を行う。また12ヶ月齢で変化を見出せた場合は若年齢のどの時期からその変化が見られるか検討を行い運動ニューロンが神経細胞死に至るカスケードの検討を行う。さらに、今回の研究により得られた孤発性筋萎縮性側索硬化症におけるTDP-43に関する神経細胞死カスケードの解析について、得られた結果を取りまとめ、成果発表を行う。
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