ピロリ菌の病原遺伝子として最も研究されているcagA遺伝子と関連する遺伝子を見つけるため、以下の実験を行った。 全塩基配列が調べられた臨床株8株{十二指腸潰瘍(DU)株 4株、胃癌(GC)株 4株}を比較して、GC群4群全てで存在が認められ、かつDU群で存在が認められない遺伝子1つと、GC群3群全で存在が認められ、かつDU群で存在が認められない遺伝子6つを候補遺伝子として選定した。さらに当大学附属病院にてDU症例から抽出された菌株58株と、GU症例から抽出された50株およびGC症例から抽出された32株においてPCRを行い、これらの遺伝子が疾患と関連しているかの検討を行った。 次に菌株間に遺伝子の多様性が認められるいわゆるplasticity region(不安定領域)にある遺伝子について調べた。この領域の遺伝子はcagAが存在する領域と同様に病原性に関わるとの報告が多い。当大学附属病院にて胃炎症例から抽出された菌株49例、DU症例から抽出された菌株50株と、GU症例から抽出された菌株50株およびGC症例から抽出された20株においてplasticity region(不安定領域)の遺伝子の有無をPCRにて比較検討した。病原性が疑われる遺伝子のいくつかはシーケンスまで行い詳細な検討を行った。 また宿主側の病原因子も同時に調べることが出来ればさらに有用であるため、胃癌のリスクが高いと思われる検体を使用してRNA microarray にて宿主側因子も調べた。 これまでのドットブロット法では連続してメンブレンを使用すると感度が低下するため、数種類の発行試薬を使用し、連続使用に耐える条件の設定について検討を行った。
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