研究課題/領域番号 |
24500139
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田中 孝之 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (10282914)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ヒューマンインタフェース / 振動刺激 / 距離感覚提示 |
研究概要 |
(1) VAI-Cを搭載したドライブシミュレータの開発 本研究の実験装置,実験環境を整備した.内蔵した振動モータの周波数制御によって振動刺激強度の調整を可能にする VAI-Cデバイスを開発した.ドライブシミュレータUC-win/Roadと統合することで,各種運転状況下における振動感覚モデルを解明するための実験システム VAI-Cドライブシミュレータ環境を整備した. (2) 運転速度と距離感覚・振動感覚のモデル化 ユーザは振動刺激を受けて距離感覚を認識するまでに,一旦振動感覚に変換し,距離感覚への変換を行っていると考える.従来VAIの研究では,被験者に「VAIを歩行環境での障害物距離センサ」と理解させて使用させたところ,振動刺激強度の対数と振動感覚には正の相関が,振動刺激強度の対数と距離感覚には負の相関があることを確認している.ここで,本研究では以下2つの仮説を置く.(a) 振動刺激と振動感覚との関係 H1 はVAIのアプリケーションに依存しない.(b) 振動感覚と距離感覚との関係 H2 はVAIのアプリケーションに依存する.これらの仮設の妥当性を実験的に確認した.運転速度によって運転環境から受ける周辺速度の視覚刺激を変化させて,振動刺強度と振動感覚,距離感覚との関係の変化を調べたところ,いずれも運転速度に関わらず一定の関係を示すことを確認した.一方,運転速度によって視覚的距離感覚は変化することから,VAI-Cによって,運転速度の変化によらず,使用者に一定の距離感覚を提示できる可能性を示した. 以上の成果を,国内会議で報告したほか,国際会議(HCII2013)にて報告する.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発するVAI-Cの性能を評価するためのシミュレーション環境を概ね整えることができた.振動刺激をより的確に使用者に提示するためのハンドルデバイスの改良が必要である. 運転速度による振動刺激強度と距離感覚・振動感覚の関係についてモデル化することができた.距離感覚モデルが運転速度に影響しなかった点で,当初立てた仮説とは異なったものの,視覚的距離感覚が運転速度に影響することから,運転速度によって使用者に提示する振動刺激強度を変化させる必要性があることを確認した.その調整方法については今後検討する必要がある.
|
今後の研究の推進方策 |
(1) 移動物体との相対距離情報提示 従来VAIでの研究では,距離情報を提示する対象物は静止しているものとして扱っていた.自動車運転においては,前方車両と接近,隔離することで前方車両との距離も時間的に変化する.つまり相対速度を持つことが多い.このように相対速度をもつ移動物体との距離情報を提示するために,これまでに開発した相対振動感覚提示法を基に,安定した距離感覚提示を実現する.相対振動感覚提示法では,基準振動と提示振動との刺激強度の差分を利用して距離情報を提示している.ここで,提示振動と基準振動の切替周期を制御することで,相対速度が上昇した際には切替周期を短く,減少したときには切替周期を長くすることで,前方車両との相対速度の変化を表現する.さらに,これまでに開発した振動感覚順応モデルを用いて,振動差分に対する慣れを考慮して安定した距離感覚,相対速度感覚の提示を実現する. (2) 自動車運転タスクへの集中度と距離感覚・振動感覚の関係解明 これまでにVAIの携帯電話型距離提示装置への適用について行った研究では,携帯操作集中度が高まることで,前方障害物に気付くまでの距離が短くなる(障害物認知度が低くなる)傾向があることを確認している.本研究で開発するVAI-Cにおいても,同様に運転タスクの負荷が大きくなり,運転への集中度が高まることによって,振動刺激に対する振動感覚の関係,振動感覚と距離感覚との関係に影響が及ぶことが予想される. 本研究では,周辺交通量を変化させて運転タスクの負荷を変えることで,運転タスクの集中度による振動刺激強度と距離感覚の関係への影響を実験的に解明し,運転タスクの負荷によらず安定した距離感覚提示を可能とするVAI-Cを実現する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
年度末に実施した実験において自動車運転手用振動インタフェースVAI-Cの環境を改善するための消耗品を購入した.また被験者への謝金を支払った.年度末の支払いとなったため,H24年度残額となっているが,いずれも本報告書提出までに支払い済みであり,実質残額はなくなっている.
|