研究課題/領域番号 |
24500373
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
高橋 将文 自治医科大学, 医学部, 講師 (20361074)
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キーワード | 左右差 |
研究概要 |
25年度は、昨年度の研究推進方策に基づき、遅れていたラットの飼育施設の調整を行い、ラット利き手判別テスト(food reaching task)とその後の遺伝子発現解析の実験系を確立した。これまでの予備的な利き手判別テストでは、クローズドコロニーのSDラットを用いたが、今回は遺伝的背景が同一の近交系ラット(F344)を用いて一連の解析を行った。正確な利き手判別テストを行うために、まず幾つかの先行研究を参考にしてプロトコールの改良を行った。与える餌の量を調節することで、5日間かけて体重を約10~13%減少させた後、food reaching task boxで餌取得のトレーニングを行い、翌日50回、さらに体重を維持しながら4日間タスクを行い、全てビデオで録画した。合計250回のタスクから右または左使用スコアを算出し、ラットの利き手を判別した。先行研究を参考に95%以上のスコアで利き手を判別した結果、現在まで解析した12週齢の雄ラットは全て右利きであった。これらの個体における線条体でのカドヘリン20遺伝子の発現細胞の分布は、frontal 切片において、前方線条体のレベルでは左側腹側外側部で発現細胞数が優位に多く、中間の線条体では同程度、後方線条体レベルではむしろ右側腹側外側部で発現細胞数が優位に多かった。比較のために用いたドーパミンD1, D2受容体のmRNA発現細胞の分布には、線条体の前後レベルでの左右差は認められなかった。これらの観察結果から、1) F344系統ラットでも線条体腹外側部にカドヘリン20遺伝子の局所的発現が認められ、2) 線条体におけるカドヘリン20遺伝子発現細胞の分布は脳の前後方向に左右差が存在し、ラット系統間において左右非対称性発現パターンが保存されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の25年度の計画では、カドヘリン20遺伝子発現の活動依存性について検討する予定であった。しかしながら、25年度は昨年の計画の修正に基づき、利き手判別テストと遺伝子発現解析の確立に時間を要したため、25年度は、カドヘリン20遺伝子の活動依存性について検討することが出来なかった。したがって、研究目的を達成するための実験を26年度に持ち越すこととなったため、総合的判断により遅れていると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は初年度に提示した年次計画を修正する。利き手テストと遺伝子発現解析を継続し、カドヘリン20遺伝子発現細胞分布の左右差を定量化し右利きおよび左利きとの関連性をさらに追求する。特に、左利きの個体において、カドヘリン20遺伝子の発現細胞の分布が右利きのものと逆なのかそれとも異なるパターンなのかどうかを明確にする。また初年度に提示した年次計画で25年度に予定していた活動刺激によるカドヘリン20遺伝子発現調節についての可能性の検討についても実験を進める。具体的には、生後初期での右または左手使用の遮断を行い、その後の線条体腹側外側部での発現に変化が認められるかどうかを解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた動物解析数が年度内に達成できず、発表用にデータをまとめる事ができなかった。そのため、25年度に計上していた旅費の使用に余りが生じたため、次年度繰り越し金が生じた。 25年度に生じた次年度使用金は、26年度において、主に学会発表や情報収集のための旅費に使用予定である。
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