福島原発事故以降、放射能に汚染された焼却灰(飛灰と主灰)の処分が問題となった。焼却によって発生する灰の内、底灰中のセシウム(Cs)濃度は低く、国の示した基準に基づき、管理型埋立地に処分されるものが多い。本研究では、通常の埋立地に埋め立てられた後、底灰中のCsは長期間、安定的に留まるのかを、Csの存在形態と溶出特性の観点から検討してきた。初年度は、安定Csを用いて高濃度化した焼却灰を対象に、溶出試験、pH依存試験により溶出特性を把握すると共に、風化加速試験を実施し、焼却灰の性状変化がCsの溶出に与える影響についても検討した。その結果、極めて低いpHでなければCsの溶出が起こらないこと、低pHにおけるCsの溶出は、AlやSiと共に起こることが判明したほか、風化加速試験のうち、特にCO2暴露条件下でCsの溶出が著しく抑制されることを確認した。翌25年度には、Csの溶出が低pHでのみ起こり、Al、Siと共に溶出する要因を解明するために、EPMA、SEM-EDX、偏光顕微鏡を用いて、その存在形態の解明に取り組んだ。また、CO2暴露条件下において溶出が抑制される理由は、主灰中の主成分であるCaが炭酸Caに変化して表面を覆うためであると仮定し、CO2暴露した灰の表面分析を行っった。検討の結果、底灰中のCsは、特定の結晶鉱物の表面に濃集しており、その位置には、結晶鉱物が燃焼時の高温によって溶融して成長したガラス状非晶質が存在していた。このことから、高温によって廃棄物中に含まれる結晶粒子表面が溶け、そこにCsが物理的に捕捉されたと考えた。H26年度は、このCsが濃集している部位の中心に存在する鉱物の由来を確認するために、様々な材料にCsを添加して加熱し、加熱後のCsの存在状態を確認した。
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