【研究内容・成果】最終年度のH26年度は、私的事由により滞っていた、「知られざるRA画家」バリーをめぐるイギリス・アイルランド調査の継続と、これまでの研究の暫定的成果報告の年となった。具体的には、(1)2014年7月11日~11日、韓国・テグ(嶺南大学)にて開催のThe 7th Internatinal Conference of Eastern Aestheticsでの研究発表、(2)2014年9月7日~14日(ロンドン)14日~22日(ダブリン・コークなど)現地資料調査である。前者の国際会議では「A Catholic Painter James Barry and the Portrait of Wounded Ireland in the 18th Century: the Colonial or 'Celtic' Sublime】と題した英語研究発表をおこなった。また9月の現地調査では、まずロンドンにて、大英博物館、ナショナルポートレイト・ギャラリーなどでバリー油彩・版画の調査。続くアイルランドでは、ダブリンの国立美術館での最初期伝記の調査、コークにてバリーの専門家Tom Dunne氏(コーク大学名誉教授)との情報交換などをおこなった。
【意義と今後の課題】以上のような調査継続と「中間報告的」成果発表(国際学会での)で最終年度を迎えた。三年間の研究課題の遂行により、日本では―じつは世界的にも―ほとんど知られていなかったバリーの生涯と活動の一部が陽の目を見たと思われる。ただし残された課題は以下である。(1)収集資料のさらなる解析・整理による包括的なバリー研究論文・書籍の刊行、(2)バリー周辺の18世紀アイルランド画家の掘り起こし、(3)「美術批評家」としての評価など。そのうえで(4)抑圧表象を描く「崇高」画家としての比較研究(東アジア圏も視野に入れた)も期待されよう。
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