研究課題
平成24年度に,統合国際深海掘削計画第330次航海(IODP Exp. 342)にて得られた深海底堆積物から産出した現生有孔虫化石の1チャンバーごとの炭素・酸素同位体比測定を開始したが,今年度もこの解析を引き続き行った.昨年度までの結果では十分なデータ数が得られていなかったが,本年度も引き続き行うことで,15個体以上から総計100チャンバー以上を切除し,それらの炭素・酸素同位体比を得ることに成功した.その結果,光合成藻類を共生させる種においてはすべての個体において,成長段階とともに炭素同位体比が増加することが確認された.また,これらの種においては,酸素同位体比は成長を通じて比較的低い値でほぼ一定で,炭素同位体比と酸素同位体比の変動パターンの間には有意な関連性は見られなかった.一方,光合成藻類を共生させていない種においては,ごく一部の個体において,成長段階とともに炭素同位体比が増加する現象が見られたが,大部分の個体においては,炭素同位体比と成長段階との間には,有意な関係は見られなかった.一方,この比共生種においては,炭素同位体比と酸素同位体比との間に明瞭な相関関係が認められた.したがって,1)成長を通じた炭素同位体比の増加と,2)炭素同位体比と酸素同位体比の有意な相関関係,の両者をもって,化石浮遊性有孔虫の光合成共生生態を判別できると結論するに至った.また,白亜紀を含むより古い時代の試料にもこれらの手法を適用するために,IODP Exp. 342(Paleogene Newfoundland Sediment Drifts)に乗船し,後期白亜紀,および古第三紀の浮遊性有孔虫化石の採集も行った.今後,これらの試料を用いて引き続き解析を行う.
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Chemical Geology
巻: 356 ページ: 160-170
10.1016/j.chemgeo.2013.08.008
月刊 地球
巻: 35 ページ: 697-704