研究課題/領域番号 |
24656572
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
杉山 亘 近畿大学, 付置研究所, 講師 (90510165)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 廃棄物処理 / 超臨界水 / 液体燃料生成 |
研究概要 |
原子力発電所などで使用され、最終的には難燃性廃棄物とされる代表的な物として、ゴム手袋並び塩化ビニルテープを選定し研究を実施した。一切の添加物を含まない水(蒸留水)を高温・高圧にした超臨界水(条件:450℃-28MPa)により、これらの難燃性物質が飛躍的に減容できるか、並びに、これらの難燃性物質から油分、すなわち、液体燃料が得られるかについて研究を実施した。結果、これら難燃性物質を油分に減容できた。このことから、難燃性物質を飛躍的に減容でき、さらに、難燃性物質由来の油分、すなわち、液体燃料を得ることができたと結論できる。 これらが減容することに伴い生成する化学物質はクロロホルムに溶解することから、いわゆる水と油の関係から、油分であり、油分であるからには液体燃料であると結論した。ゴム手袋から40%程度、塩化ビニルテープから10%程度、油分(液体燃料)が得られることがわかった。 時間依存性については、ゴム手袋並び塩化ビニルテープ共に、顕著ではなかった。一方、重量依存性については、ゴム手袋に見られたものの塩化ビニルテープには見られなかった。 塩化ビニルテープ分解後の水に硝酸銀水溶液を滴下したところ、白色の沈殿が形成された。この白色の沈殿は塩化銀である。斜光することなく保管したところ黒色に変色した。このことから、塩化ビニルテープを超臨界水処理した後の水には、塩化ビニルテープから塩化物イオンが脱離していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
難燃性廃棄物を一切の添加物を含まない水(蒸留水)で分解するための最適条件を本来であれば、決定する必要があった。しかし、この最適条件を決定するためには膨大な時間が必要となる。その理由は、パラメータが温度、圧力、分解時間と少なくとも3種類存在するためである。平成24年度は近畿大学原子力研究所の10立法センチメートルのバッチ式反応容器の特徴を鑑み、確実に超臨界水状態である条件の反応前投入水量を4立法センチメートルとした場合、反応容器内温度が450℃の時には、反応容器内圧力は28MPaであった。この条件を、まずは、平成24年度の初期条件と設定し、研究を実施した。 結果、原子力発電所などで使用されるゴム手袋並び塩化ビニルテープは飛躍的に減容でき、さらに油分(液体燃料)を得ることができた。 塩化ビニルテープを分解した後の水から塩化ビニルテープから塩化物イオンが脱離することが硝酸銀水溶液を滴下し白色の沈殿が形成したことからわかった。塩化ビニルテープを焼却処理してしまうと、塩化物イオンが気体として発生し、焼却炉の配管を腐食させたり、公害の原因となることは事実である。超臨界水処理であれば、塩素を反応容器内に閉じ込めることができることを証明したことになる。今後の国際社会問題を鑑みれば、グリーンケミストリーの1つの具体的な例であると研究代表者は考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進の方策についてであるが、まずは、難燃性物質から得られた油分が原油相当であることを分析したい。元素分析により、どの程度炭素並び水素が含まれていて、その値が原油相当であるかを分析したい。原油については、石油連盟のご厚意によりサンプルを得ている。 福島県の除染事業の一助にならないか、検討しております。セシウムが土に付着し岩石のようになっていると耳にしております。塩化ビニルテープを超臨界水処理した後の水には塩化物イオンが生成している。このことから、塩化ビニルテープとセシウムで汚染された土を入れた場合、アルカリ金属であるセシウムは処理後の水に塩化物イオンのカウンターイオンとして存在するのではないかと考えております。この実験を実施するためには、反応容器1式を放射性物質実験用として使用せねばならないことなど、大きな問題が多岐に渡り発生します。しかし、困っている方々を助けたい考えもあります。平成25年度には以上のような研究も検討しております。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に必要なパーソナルコンピュータが不足しているため、平成24年度と同様に20万円程度のパーソナルコンピュータを1台購入予定である。 東北大学金属材料研究所山村先生に密に連絡を取り、難燃性物質から得られた油分が原油相当であることを元素分析装置にて分析する予定である。この旅費に使用したい。 福島の除染事業の研究を実施するためには、やはり、近畿大学原子力研究所で使用している反応容器1式を除染事業専用として使用したい。そのための反応容器費用に使用も検討している。
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