本研究の目的は日本語学習者のパソコン(以下PC)を用いた作文過程を明らかにすることである。PCでの活動を明らかにするために、まず手書きでの活動を比較対象とした。また、異なる母語での比較も行った。そして、PCでの作文過程において特徴的に見られる活動を重点的に分析した。 PCと手書きの作文過程における活動を8つの活動カテゴリー「テーマを読む」「書いた文または文の一部を読み返す」「編集」「論評・評価」「外部リソースによる助け」「計画」「試行」「発話しながら書く」を用いて比較した。中国語母語話者(中級・上級)はPCでは「外部リソースによる助け」の頻度が高かった。中級では「編集」の頻度も高かった。英語母語話者(中級)はPCでは「外部リソースによる助け」「編集」「書いた文または文の一部を読み返す」の頻度が高かった。 PCと手書きの場合での作文の長さと時間を比較した。中国語母語話者中級においてはPCを用いたほうが所要時間が長かったが、作文の長さに差は見られなかった。中国語母語話者上級においてはPCを用いたほうが作文の長さは短かったが、所要時間に差は見られなかった。 PCでの作文過程における活動を母語の違いにより比較した。中級において、中国語母語話者は「試行」の頻度が高かった。英語母語話者は「論評・評価」「計画」の頻度が高かった。 PCの作文過程で特徴的に見られる活動として「外部リソースの助け」を取り上げ、分析を行った。中国語母語話者は漢字の読みを調べる活動がよく見られた。英語母語話者は検索サイトの検索窓に直接英語の語句を入力し検索したり、英語の語句と“in Japanese”や“how to say”を同時に入力して検索したりすることが見られた。 中国語母語話者がよく漢字の読みを調べていたことから、彼らがどのように作文過程で発音と表記の誤りに気付き修正するのかということについても分析を行った。
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