研究課題
基盤研究(B)
感覚シナプス入力の可視化in vivo可視化パッチクランプ法(shadowpatching法)を用い、麻酔下マウス大脳バレル皮質L2/3錐体細胞において、ホールセル記録とカルシウムイメージングを同時に行った。様々な洞毛刺激(主洞毛と隣接洞毛、刺激方向、刺激頻度、刺激強度)を与えた時に、錐体細胞の樹状突起において、感覚シナプス入力がどのような時空間分布で入力するかをカルシウムシグナルとして単一スパインレベルで可視化した。自発シナプス入力については、樹状突起局所の近傍に位置するスパインに同期した入力がある確率が高いことをすでに示していたが(Science, 335, 353-356, 2012)、感覚シナプス入力についても近傍のスパインで同期入力の確率が高いことが明らかになった。また、自発シナプス入力、感覚シナプス入力ともに、ごく一部のスパインに大部分の入力が集中していることが明らかとなり、各スパインにおいて、自発シナプス入力頻度と感覚シナプス入力頻度に正の相関が見られた。さらに、多次元尺度構成法を用いてシナプス入力の空間パターンを詳細に解析したところ、自発シナプス入力パターンと感覚シナプス入力パターンの間に高い類似性を見出した。これらの結果は、感覚情報は神経回路が内在的に持つ活動パターンを用いて表現されていることを示唆している。これらの実験をさらに効率的に、再現よく行うために、高感度カルシウムプローブタンパク質を用いた実験系の導入を行った。高感度カルシウムプローブタンパク質をコードするウイルスベクターを大脳皮質に注入することで、少数のニューロンにプローブを発現させ、自発シナプス入力および感覚シナプス入力を再現よく観察できることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した本年度の研究実施計画について、その目標をほぼ達成しており順調に進行している。
本研究に必要な技術開発(シナプス入力可視化法、ウイルスベクターによるカルシウムセンサーの導入)はすでに完了し、実験を集中的に行っている。今後、これらの実験をさらに推進していくとともに、本研究の目的である、単一シナプス活動によるpopulation codingについて明らかにしていく。
当初計画では、大学院生の増員に伴い必要となる、特注のオペラント学習装置(定価3,000千円)を購入する予定であったが、複数大学院生が実験時間の調整を行うことで、計画通りに実験を進めることが可能であることが判明したため、購入を見送った。大学院生の増員に伴って、必要な消耗品(分子生物学実験試薬、蛍光試薬等)が増えたため、それらの購入に充てる予定であるが、さらなる増員によってオペラント学習装置が必要となる場合はその購入に充てる。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 1件)
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