研究課題
基盤研究(B)
腸管内分泌K細胞の単離、回収を目的にGIP-GFP knock-in(GIP-GFP)マウスを作製し、フローサイトメーターを用いて回収したK細胞のマイクロアレイ解析を行ったところ、K細胞に特異的に高発現する転写因子regulatory factor X 6 (Rfx6)を同定した。Rfx6のK細胞での機能的な意義を検討するため、マウス腸管内分泌腫瘍株STC-1細胞を用いて解析を行った。Rfx6-knockdown STC-1細胞では、コントロールと比較してGIP mRNA発現、細胞内GIP含有量及びGIP 分泌の有意な低下を認めた。またexpression plasmidを用いたRfx6強発現下ではGIP mRNA発現量の増加を認めた。Rfx6とGIPプロモーター遺伝子を用いてone-hybrid assayを行い、GIPプロモーター上流5216~6215 bpにRfx6の結合を認めた。また、GIPプロモーター遺伝子を用いたluciferase reporter assayでは、確認したRfx6結合部位を欠損するとluciferaseの活性低下を認めたことから、同部位がGIP遺伝子活性に重要であることが明らかとなった。次にRfx6のin vivoでのK細胞における機能的意義を検討した。高脂肪食負荷GIP-GFPヘテロ(HFD)マウスは、通常食負荷GIP-GFPヘテロ(CFD)マウスに比較して有意な体重増加と経口糖負荷後のGIP分泌の増加を認めた。HFDマウスでは、CFDマウスと比較して上部小腸内のK細胞数に差を認めないが、腸管GIP含有量の有意な増加を認めた。さらに、HFDマウス小腸K細胞のGIP mRNA及びRfx6 mRNA発現量は、CFDマウス小腸K細胞に比較して有意に増加していた。以上から我々は、Rfx6がK細胞内でGIP遺伝子発現を正に調整し、高脂肪食肥満下のGIP分泌亢進に関与することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
前述した成果は、論文化しすでにThe Journal of Biological Chemistryに掲載された。GIP-GFPマウスを用いたK細胞と非K細胞をマイクロアレイや半定量的PCRの結果から、GIP分泌や合成に関わるいくつかの新たな分子に注目し、機能解析を行っている。またこれまでGLP-1分泌への関与が報告されているいくつかの脂肪酸受容体に注目し、K細胞における遺伝子発現量を評価したところ、K細胞が発現する腸管部位によって腸管脂肪酸受容体の発現局在が異なることを明らかにした。
申請者らが単離したK細胞に発現する新規分子(脂肪酸結合蛋白ならびにG蛋白質共役受容体)のGIP合成や分泌への関与については、マウス腸管内分泌細胞STC-1細胞を用いてin vitroで解析中である。これらの分子のうち、脂肪酸結合蛋白質については、欠損マウスを他大学との共同研究により入手し、in vivoでのK細胞におけるGIP合成や分泌能を評価中である。G蛋白質共役受容体については、K細胞における役割を評価するため、ノックアウトマウスを作製しGIP合成や分泌能を解析中である。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件)
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