最終年度は主にデータ整理と解析、学会発表と講演、科学雑誌への投稿等、社会還元に注力した[招待講演1件、口頭発表2件、学術誌掲載・受理各1件]。 再現性の高い成果に基づく理論が存在する均一系反応の磁場効果(MFE)に対し、不均一系、特に光触媒反応MFEは報告例も少ない。本研究ではZnOとチタニアへのUV照射によりメチレンブルー(MB)溶液脱色反応を行い、直接・間接MFEに関与する様々なパラメタを検討した。 1.再現性:反応セル温度制御や吸光度in-situ測定等により、7種類の実験条件(粉末のガス吸着・分散性、MB溶液の濃度・静置時間・温度・溶存酸素[DO]濃度、光強度)を制御し、各4回試行MFE値の誤差2%以内収束に成功した。 2.磁場強度依存性:MFE絶対値は上に凸の曲線を示す(0~0.7T)。MFEの正負は粉末へのガス吸着(CO2、水分子)で変化し、表面近傍静電ポテンシャルが重要である。 3.MB溶液濃度:0.01~0.03mmol/Lの範囲では低濃度ほどMFEは顕著に発現し、関与ラジカルや化学種の拡散律速が示唆された。 4.DO濃度:低濃度(DO~0.5mg/L)でMFEは消失し、濃度増加に伴い負のMFEが顕著になる。 5. 光触媒や被分解物質の種類によるMFE変化は、固-液界面ポテンシャル変化と関連する。 光触媒MFEでは表面近傍短範囲拡散が重要であり、静電ポテンシャルとDOの影響が強く示唆された。これらより、界面近傍ポテンシャル勾配により磁場が有効な力をDOに及ぼし、磁気対流やミクロな磁気拡散を誘発してMFE現象が発現する、という現象論的OANSモデル(表面近傍酸素流動加速モデル)を提唱して妥当性を示し、さらなる機構解明への足懸りとした。これらの成果は環境汚染物質の高効率除去や太陽電池電極反応への応用とも関連するほか、溶液中酸素挙動の磁場制御は医学的応用も考えられる。
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