研究課題/領域番号 |
25670258
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
稲垣 暢也 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30241954)
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研究分担者 |
松田 哲也 京都大学, 情報学研究科, 教授 (00209561)
豊田 健太郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00447971)
木村 寛之 京都大学, 学内共同利用施設等, 助教 (50437240)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イメージング / 糖尿病学 |
研究概要 |
本研究では、核磁気共鳴(Nuclear magnetic resonance,NMR)の技術を用いて、非侵襲的に膵β細胞量を検知するために、①膵β細胞特異的なプローブを設計・合成し、②超高磁場MR装技術を用いて核磁気共鳴(MR)スペクトロスコピー(Magnetic resonance spectroscopy,MRS)を行い、③糖尿病モデル動物で検証する。 平成25年度は、MRS 解析用プローブの合成し、受容体親和性などの基礎評価とINS1細胞を用いたin vitroの結合評価を行った。具体的には、Exendin(9-39)の12位にフッ素分子を6分子リンカーを用いて結合させたプローブを合成し、膵β細胞腫瘍株INS-1細胞に暴露し、洗浄後にMRS解析を行った。しかしながら予想される0ppmに19F由来のシグナルが得られなかった。細胞数を増やし解析時間を延長しても同様の結果であった。そこで、GLP-1 受容体への親和性の低下を結合実験で行ったところ、IC50=1.15(μM)と従来のExendin(9-39)に比して10倍以上結合能が低下していた。そこで、基本骨格をExendin(9-39)からExendin4に変更して新たなプローブを合成した。合成後、まずGLP-1受容体結合能を評価したところ、IC50=0.09(μM)と強い結合能が維持されていた。次に、INS-1細胞での同様の実験を行い、2、14、28時間のMRS解析した結果、前検討と同様0ppm周辺に強いシグナルピークを認めた。 しかしながら、19F標識Exedin4溶液と、28時間解析検体において、12ppmに小さなブロードのピークを検出しており、その由来が不明であったため原因探索を開始した。 最終的に、小ピークがプローブ由来、0ppmの大シグナルがペプチド合成で混入していたTFAによるシグナルと判明した。28時間解析でのプローブ由来シグナルはわずかであるため、実験系の改良が必要と判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の検討において、前検討で得られていた0ppm周辺のシグナルが混入物によるピークと判明したことは予想外の結果であった。本研究の根幹に関わる問題で有、その原因探索に時間を要したことは事実であるが、結果として12ppm付近のピークがプローブ由来と判明し、かつ、わずかながら28時間解析で検知できていることも判明した。以上の結果から、今後シグナル増強させる実験系が構築できれば、予定通りの解析を進められると判断した。すでに、ヒトGLP-1受容体発現ベクターの構築を開始しており、本研究は、当初予定通りに進められている状況であるため、区分を「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
【1】MRS 解析用in vitro 実験系の構築:結合能が維持されている19F標識Exendin4プローブを用いても、100万個のINS-1細胞を用いた28時間のMRS解析によるプローブ由来シグナルはごくわずかであった。従って、当初予定の通り、今後の定量性評価や19F-MRI による画像化検討を行うために、安定して高MRS シグナルが得られる実験系を構築する。具体的には、①. ヒトGLP-1 受容体(hGLP-1R)発現ベクターを作製、②. HEK293 細胞に①のベクターを導入してhGLP-1R安定発現株を作製する。 【2】19F 標識Exendin4プローブを用いたin vitro解析:作製したhGLP-1R安定発現細胞株を用いて19F-MRS 解析を行う。19F-MRS は超高磁場動物用NMR機器(BRUKER Biospec 70/20 USR)を用いて行う。また、この19F-MRS 解析の際には非標識Exendinを用いる阻害実験も並行して行い、得られるMRS シグナルが19F 標識プローブのhGLP-1Rへの結合による特異的シグナルであることを同時に検証する。 【3】糖尿病モデル動物を用いた評価:hGLP-1R安定発現HEK293 細胞を免疫不全マウスに移植し、同超高磁場NRM/MRI 機器を用いて、腫瘍部のMRS 解析とMRI 画像化検討行う。同時に解析条件の最適化を行う。この際、同時にT1, T2 強調画像撮像も施行し、腫瘍だけでなく膵臓において膵β細胞のシグナルが得られるかどうか検証する。次に、ストレプトゾトシン誘導糖尿病マウスや膵島定量モデルを作製し、MRSシグナルと膵島量が相関するかどうか検証する。最後に、自然発症糖尿病モデルを用いて、MRS解析と膵島量の経時的な変化を解析し、本プローブの有用性を検討する。
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