研究課題
本研究では、核磁気共鳴(Nuclear magnetic resonance NMR)技術により非侵襲的に膵β細胞を検知するために①膵β細胞特異的なプローブを設計・合成し、②超高磁場MR技術を用いて核磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)を行い、③糖尿病モデル動物で検証することを目的としている。昨年度、ファントム実験およびプローブの細胞への結合を評価する実験を行った結果、トリフルオロ酢酸(TFA)と思われるピークが目的のピークのほかに確認され、かつ大きいシグナルであった、そのため、今年度は、①TFA除去カラム(VariPureTM)を用いてプローブの脱TFAを行い、②プローブの細胞への反応性向上を目的としてターゲットとしているGLP-1受容体を過剰に発現する細胞を遺伝的技術により作成し③TFA除去プローブの細胞への結合を評価した。TFAは通常ペプチドの合成・精製の際に使用し、カチオンのカウンターイオンとして存在する。そのため、今回は、精製後のプローブにTFA除去カラムを用いてTFAの除去を試みた。その結果、MRシグナルにおいてTFAに由来する0 ppm付近のピークの消失を確認したことからTFAを選択的に除去できたと考えられる。また、細胞でのプローブの結合・取り込みを増やすためにGLP-1受容体を強発現する細胞を作製した。具体的には、ヒトGLP-1受容体をコードしたプラスミドを作製し、HEK293細胞に遺伝子導入を行った。薬剤でのセレクションを行い、hGLP-1R安定発現細胞を得た。作製した細胞を用いて、TFA除去プローブを反応させ、MRS測定を行った。その結果、細胞レベルではプローブ由来のピーク10 ppmあたりには観察できなかった。しかしながら、7、17ppmあたりにブロードで小さなピークを観察することができた。今後このピークについて検証を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度の検討において昨年度プローブ由来のピーク以外にみられたTFA由来のピークを除去が可能なことが分かり、プローブ以外のフッ素についての対応策が構築できた。また、当初の予定通りヒトGLP-1受容体発現ベクターを作製し、hGLP-1R安定発現細胞株の作製を完了し、MRS実験への応用ができた。そのため、おおむね順調とした。
F-MRIでの評価において、プローブの感度は重要である。H-MRIと異なりハード面での性能の向上が望まれるため、プローブの性能が画像に大きく影響する。そのため、MRIでのイメージングのためにファントム実験や細胞レベルでのピーク検知実験を進め、同時にプローブ構造の最適化を最優先に実験を進める。必要に応じてシグナル増強のためにプローブ構造とくにフッ素の数を変化させたプローブを検討する。in vitroでの評価の後、マウスでのイメージング検証を行う。まず、膵臓描出の可能性を評価するため野生型マウスを用いて行う。糖尿病モデルマウスでも同様に行い膵臓でのプローブ集積比較を行う。
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