当初の目的であった、多発性骨髄腫(MM)腫瘍細胞自身におけるVE-cadherin発現と病態生理の解明は初年度の研究成果より直接の関連性を見出すことは困難と考えられた。そこで昨年度からは、MMの腫瘍進展の病態に重要な血管新生に関連した分子の一つであるIL-8に関与が示されているCD28に着目した。CD28はT細胞表面の補助受容体でT細胞活性化に寄与している一方、形質細胞にも発現しており腫瘍増殖・生存に関わっていると言われているがそのメカニズムは明らかにされていない。フローサイトメトリーにおいて、新規治療薬で治療後再発・再燃したMM患者におけるCD28の発現が、初発・無治療のMM患者より有意に上昇しており、とりわけ形質細胞腫や、t(11;14)を有している患者に多い傾向がわかった。その原因として、腫瘍細胞における接着分子に関連性がないかを細胞接着分子であるCD56に着目すると、フローサイトメトリーにおいてCD56発現低下がCD28発現陽性例に多くみられることが明らかとなった。そこで、種々のMM細胞株におけるCD28とCD56の発現について検討したところ、KMS11、ARH77、U266においてCD28+/CD56+とCD28+/CD56-の2つの分画が存在すること、またKMS11、ARH77においてはCD28+およびCD28-の分画が存在することが分かった。次に、これらの各分画を用いて新規治療薬であるボルテゾミブ耐性の有無を比較検討した。すると、KMS11、ARH77においてCD28陰性分画よりCD28分画の方がボルテゾミブ投与後アポトーシスを起こしにくいことが分かった。更に抗CD28抗体を用いてCD28を阻害することで、ボルテゾミブ投与後のアポトーシスを誘導することが可能かを検討したところ、ARH77においてCD28阻害によりボルテゾミブ投与後のアポトーシスが増強する結果が得られた。以上より、MMにおいてCD28と薬剤耐性との関連性が示唆された。
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