本研究では審議会・懇談会の会合開催状況及び委員名簿を収集し,民間企業による政治参加の実態を調査した。公式的な会合である審議会であっても民間団体の参加が確認できること,審議会と懇談会の使い分けや会合数については省庁ごとの違いが大きいこと,基本的政策型審議会において会合数の減少が大きいことなどが発見事実として得られた。 これらのデータを解釈していくための理論的基礎として,安全管理研究におけるルーティンの理解を,アナロジーとして用いるという着想を得たことも,平成26年度の成果の1つである。イノベーションの初期段階にもたらされる混乱は,行政機関の視点では事故への対応のようなものであるととらえる事ができる。事故に対応する行政機関のルーティンがどの程度発達しているのかを読み解き理解することで,企業側の正当化戦略上生じうる課題をより正確に予想したり,複数の正当化戦略を比較することができる。省庁毎に会合数が大きく違う現状で,複数の陳情先が候補にある場合,民間企業による陳情がルーティンである省庁と,例外事象に近い省庁とでは,企業側の準備の仕方が異なると考えられるのである。これらの内容について,組織学会及びイノベーション研究センターサマースクールにて口頭報告を行った。 審議会や懇談会への参加や,その前段階の行政のルーティンを読み解いていく作業は,企業家にとって日常的な事業運営とは大きく異なる。本研究で残された問題は,企業家の行政理解が,政府行政とコミュニケーションを取る前の段階からどのように変容していくのかについて理解することである。陳情に至らなかった事例はどのような理由でそのような結果となったのか。行政が政策課題の萌芽的段階を逃さないためにはどのような制度設計を行えば良いのか。これらが今後の研究課題である。
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