「ブラッセルI改正規則」が2015年1月10日から適用開始されたことから、EU加盟諸国では、同改正規則に関する論考、およびその条文解説等の重要な資料が数多く公刊された。2016年度は、2015年度に引き続き、それらの資料を入手し、その読み込みおよび分析・検討作業に当たった。 海外での調査としては、イギリスのロンドン大学において資料収集を行った。イギリスは、大陸法的な性質を持つ改正前の「ブラッセルI規則」に対して、かねてより英米法的視点から批判的な議論を展開してきている。そしてその議論は、今回の「ブラッセルI改正規則」において、1.「残余管轄」に関する第4条2項、2.訴訟競合及び関連訴訟への訴訟中止に関する第33条、34条、3.合意管轄に関する第25条、に反映されており、これらの改正は、従来批判のあった同規則の「内向きの性質」を、これらの諸点に関しては立法的に解決したと評価しうるものとなっている。今回の調査においても、この点に関する貴重な資料を収集することができた。 研究成果としては、2016年度は、上記の資料収集および分析・検討をもとに、まず、上記3.の合意管轄に関する第25条について「Brussels I Recastにおける管轄合意規定」と題する論考を執筆し公刊した。さらに、これらの改正規則が、特に上記1.2.3.の点につき、CJEU(ヨーロッパ共同体司法裁判所)の出してきた判決に与える影響について、現在、「ブラッセルI改正規則がCJEUの判例に与える影響(仮題)」と題する論考を執筆中である。
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