本研究は、溶出時間の高精度な規格化と復元の技術によるペプチド情報のデータベース化とシグナルとノイズの効率的な分離によって高感度・高深度定量プロテオミクス技術を開発することを目的とする。昨年度に前倒しで行ったFalse Discovery Rate計算法の評価を行ったところ、市販ソフトウェアの汎用False Discovery Rate計算法よりも低濃度のシグナルまで検出することが可能であることが明らかとなった。また、データベース保管形式をタンパク質ではなくペプチドを中心としてデータベースに変更することによって、偽陽性データの検証の性能を向上させた。溶出時間の補正方法を既存の複数の方法と比較を行った結果、開発したオーバーラップピークのシフト補正方法が最も補正精度の高いことが明らかとなった。さらに、既存のペプチド情報のデータベースとデータ融合を行うことによって、ヒト全プロテオームの約半分をカバーするデータベースを構築した。さらに、構築データベースを用いて統合失調症患者の前頭葉プロテオームの解析、脳腫瘍患者の髄液プロテオームの解析、がん患者血液のプロテオーム解析を実施し、ネットワーク解析やバイオマーカー探索に応用した。
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