研究課題
当初の研究目的である、新たな肝分割プロトコールを考案することを目標に実験を行った。まず、常温酸素化灌流の適切な保存条件の検索として、常温酸素化灌流における酸素運搬体の必要性について検討した。ドナーブタから肝を摘出し、酸素運搬体としてドナーブタ血を10%配合するモデルと、酸素運搬体を配合しないモデルを準備し、12時間の常温酸素化灌流を行った。結果は酸素運搬体を配合しないモデルに比較して酸素運搬体を配合したモデルでは、グラフト肝の浮腫が軽減されており、また灌流液中の肝逸脱酵素の上昇が抑えられ、さらに胆汁産生も認め、酸素運搬体の必要性を示唆する所見が得られた。さらにその灌流中のアミノ酸を分析し、常温酸素化灌流においてもアミノ酸代謝が行われていることを示唆する所見が得られた。それをもとに、脳死ドナーブタモデルを用いた常温酸素化灌流装置による分割肝移植法について検討を行った。脳死ドナーを想定したブタモデルを用い、上記で使用した常温酸素化灌流装置を用いて常温酸素化灌流保存し、保存中に肝分割を施行した。そして保存後レシピエントブタに異所性肝移植を施行し、その移植後の変化について検討した。また、対照群は、現在臨床で行われている冷保存を用いて同様に分割した。その結果、脳死分割肝移植を想定したモデルにおいても常温酸素化灌流装置を用いて保存した方が、冷保存に比較して、そのグラフト保存効果が高いことが示された。この技術を臨床応用することにより、脳死肝移植における分割肝移植が増加し、脳死ドナーグラフト不足を解消する一助になることが期待される。
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Transplantation Proceedings
巻: 47(2) ページ: 419-426
10.1016/j.transproceed.2014.10.053.