研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
25105713
|
研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山下 恭弘 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90334341)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 触媒 / 不活性炭素-水素結合 / 分子骨格形成 / 強塩基 |
研究概要 |
ブレンステッド塩基触媒を用いる基質の脱プロトン化によって生成したアニオン種の求電子剤への触媒的付加反応は、原料から生成物への水素原子の移動のみを伴う最も原子効率の高い汎用的反応である。これまでにこの型の反応を促進する金属塩基、有機塩基を含む様々な塩基触媒が開発され立体選択的分子骨格構築反応に応用されてきたが、これまでに主に開発がなされてきた反応ではそのほとんどが反応基質の反応点に酸性度のより高い水素原子を有する化合物を用いるものであり、酸性度のより低い水素原子を有する化合物を基質として積極的に用いる研究は非常に遅れていた。そこで本研究では、反応中間体である生成物塩基の塩基性に着目し、これを積極的に活用するより酸性度の低い水素原子を反応点に有する基質を求電子剤と反応させる反応系や触媒系の開発を行った。種々検討の結果、反応中間体に強塩基性を発現しうるイミンに対する付加反応が、触媒量の強塩基存在下酸性度のより低い水素原子を有する化合物であるα位に活性化基を有さないエステルやアミド、ニトリルやトルエン等を用いた際に触媒的に進行することを見出した。さらに、これら化合物がイミンのみでなくα,β-不飽和アミドに対しても触媒的に1,4-付加することを明らかにした。一方、これらの反応の触媒的不斉合成反応への展開についても検討を行い、リチウムアミドに光学活性配位子を組み合わせることで、プロピオンアミドの1,4-付加反応において良好な不斉収率が得られることを明らかにした。これらの結果は、酸性度のより低い水素原子を有する化合物を基質として積極的に用いる立体選択的反応の開発の新たな展開につながるものであると言える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低活性基質であるプロピオンアミドの1,4-付加反応において、良好な不斉収率を得ることができた。この結果は、低活性基質の塩基触媒による立体選択的反応に新たな可能性を示すものであると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、新たに可能性を見出したプロピオンアミドの1,4-付加反応において、不斉収率の向上に向けた検討を行う。さらに、他の低活性基質を用いる反応開発、および様々な求電子剤への反応開発を行っていく。
|